羽根つき餃子、ぷるもち水餃子の大阪王将│5フリーで食卓へお届け
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山本純子

  • 2022年12月15日

人がほとんどいない工場が今どき~しかも「停まらない!」 それは人間愛かも

今回は『工場のはなし』です。 “食品工場の自動化・DX展”とうたっている「第3回フードテック ジャパン」(2022年12月7日-9日、幕張メッセ)会場で、取材をしていた時の会話。 「なるほど、この機械が完成したら、この場所で作業していた人たちがいなくなる訳ですね。じゃあ例えば一千万円払っても、給料を考えたらすぐ元がとれる。2年くらいで」 「いえいえ、16時間連続で動いてくれますから倍で考えてください」 「そうか!二交代」 「しかも歩留まりがいいです。レシピ通り。誤差は2%未満! 人の場合は10%近く」 「それもすごい。コストアップが深刻な昨今、即採用ですね」 少し沈黙があり、にっこりして、 「人が1日中ずっと同じことを繰り返すなんて、そんなつらい仕事はもう無くしていかないと、、、」 コストのことばかり考えていた自分を恥じました。そして、チャップリンが機械の歯車に挟まれる映画のシーンが浮かんだのです。ああ、この方は、世のため人のためになる食品機械の開発が嬉しくて、生きがいなんだと敬服した次第。展示会場には、DX、IoT、AI、ロボットなどなど、さまざまな無機質な横文字が溢れていましたが、技術開発の原動力は人間愛かも、と考えながら帰路につきました。 都市化が進むと共に、商品は効率よく生産され、付加価値を付け、流通、販売、消費されていく訳ですが、その便利さのために、人に負担のかかる作業が必須になるという矛盾もありました。それはモノクロ映画の時代からの大問題。それがすっきり解決されていく、というのが今どきの工場です。   日本最大最速級の餃子工場は『停まらない』 2022年9月に竣工、11月に稼働開始したイートアンドフーズ関東第三工場も、まさに今どきの工場です。しかもかなり先を進んでいます。そのキャッチフレーズが「停まらない工場」(仲田社長)です。 「停まらない」って、忙しそうな感じに聞こえますが、製造ラインに人は数えるほどしか見当たりません。AI、IoTを活用して、餃子の生産工程を一括管理しているからです。ちゃんと餃子が包まれているか、トレイに規定の個数がはいっているかなどなど、監視チェックしているのは、人に代ってカメラです。カメラは、いわばコンピューターの目。人の目よりも正確に、大量に学習している情報に基づいて不備のあるものはラインからはじいていきます。 ▲人手がほとんど不要という餃子成型ライン。「ずーっと見ていたい」と熱心に見学する冷凍食品マイスター、タケムラダイさん㊥、㊨は自慢の工場が完成してニッコリ、イートアンドフーズ山本浩専務。 自動化装置は最先端です。餃子の原材料は別室で下処理したものをAGV(無人搬送機)が一時保管庫の前まで運んでいます。大量の重い原材料を人力で押して運ばずとも良いのです。 そして、「停まらない」との言葉を生んだ、画期的なアキューム装置(トラブル対応中の製品の一時回避装置)。これには驚きました。 もちろん、大量生産する冷凍食品工場では、稼働時間中フル稼働して、生産計画通りに、流れるように製造するのが理想的。しかし、いくつかの製造工程の中でひとつトラブルが起こるとその流れがストップ、ロスタイムとなります。ちょこちょこ停止することを「ちょこ停」と言うそうですが、その「ちょこ停」が起こる度に生産効率は低下します。つまり、それがコストアップにもつながってしまうということです。それを避けるのがアキュームレーション。日本語では「蓄積」でしょうか。 数年前、アキューム機能を他のメーカーでも見たことがありますが、それは、トラブルが起こった時に、その前工程の速度を低下させるものでした。当時も「コンピューターってすごい」と驚いたものですが、今回導入されたイートアンドフーズのアキューム装置は、さらなる驚きがありました。生産速度を落とさず、さらに、凍結した製品の品質をしっかりと保っているのです。 トラブル解消後のアキューム装置動作に胸がときめく イートアンドフーズ関東第三工場のアキューム装置は、包装ラインにトラブルが起こった時に作動、餃子のトレイを並べて、1段、また1段と装置に積み上げていきます。そして、中は保冷機能付き。 トラブル解決後は、積み上げていた餃子のトレイを少しずつラインに戻していきます。その戻し方がすごい。ラインの流れを止めず、頃合いを見て1つずつと丁寧なのです。まるで高速道路のパーキングエリアから、運転のうまいドライバーが本線に合流するかのような手際の良さ。思わず機械に向かって「えらい!上手!賢い!」と褒めていました。 冷凍食品にとってとても重要なポイントのひとつにコールド・チェーンがあります。出荷から流通・販売、そして調理されるまでの冷凍庫での保管状態も含め、マイナス18℃以下の温度帯を繋いで保つことです。これまで、その品温管理は工場出荷の段階からと考えていましたが、同工場のアキューム装置を見て改めました。 製造工程でも品質維持を重視するきめ細やかな配慮。同社の『餃子愛』を強く感じた視察でした。 もちろん、機械も間違うことがあるでしょう。それをコントロールするのが人の仕事。 美味しい冷凍食品は人を幸せにしてくれます。そして、美味しい冷凍食品を作る人たちが幸せであることも重要と、しみじみ感じ入っている2022年末です。

  • 2022年11月17日

冷凍食品消費大国へ!1人当たり消費量23.1kg 日本は世界第5位ですが…

「日本を冷凍食品消費大国にしたい!」というのが、冷凍食品『愛』が強すぎる3人組、F3(エフスリー:冷凍生活アドバイザー・西川剛史さん、冷食マイスター・タケムラダイさん、そして冷凍食品ジャーナリスト山本純子)の合い言葉。F3は、2022年4月TBSテレビ「マツコの知らない世界」に3人揃って出演した際に生まれたトリオの名前です。 「日本は、もう消費大国じゃな~いの~?」というマツコさんに、国民1人当たり冷凍食品消費量は世界5位、しかも4位との差が大きいというグラフを見せたところ、「えーー!!」という反応がありました。確かに、日本は冷凍食品の開発、生産、流通で冷凍食品の先進国であってしかるべきですね。今回はちょっと深掘りをしてみましょう。   実は、もう少しだけ多めに消費しているという発表 2021年の日本の国民1人当たり冷凍食品消費量は23.1kg。日本冷凍食品協会では、国内生産量と冷凍野菜輸入量、冷凍食品協会会員による調理冷凍食品輸入量を合計したものを「冷凍食品消費量」としてまとめています。同年では290万トン。それを人口で割ると23.1kgとなります。 【表 資料 2022年統計速報文書 表-12】 〔資料:(一社)日本冷凍食品協会 令和3年(1~12月)冷凍食品の生産・消費について(速報)〕   「冷凍食品消費量」としてはいますが、発表時に協会では「調理冷凍食品の輸入については、当協会会員だけを対象にした調査であり、会員以外の商社、流通業者等が輸入しているものを考慮すると、実際の「消費量」はこの290万トンを上回るものと考えられる」と注釈を加えています。調理冷凍食品の輸入量調査数値は、協会会員38社を対象としたもので、同年は23万6千トン余でした。ではその他がどのくらいあるか?といっても、よく分からない、というのが実際です。輸入通関の際の品目が多岐にわたっているため、つかみきれないということです。   国内生産量はもう少し規模が大きい 経済産業省が今年2月、冷凍食品産業の伸長ぶりをリポートしています。 https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20220221hitokoto.html 同リポートで掲出しているのは、2019年までの工業統計調査による「冷凍調理食品の製造品出荷額」ですが、同年で1兆1999億円です。リポート内でも言及していますが、出荷額の多くは大手資本の企業が占めています。さらに中小企業でも大手の下請けも多いかと推測できます。その他いろいろな事情を置いて、少々乱暴ですが単純に同年の冷食協統計数値と比較すると、協会会員生産量の比率は約6割となります。 業界人が聞けば、なるほど、それくらいかなぁと思わせる比率かもしれません。 各国消費量、初の1位にドイツ、台湾が急伸 【表 棒グラフと数値表の2点】 〔資料:(一社)日本冷凍食品協会「令和3年 冷凍食品に関連する諸統計」から作成、海外資料はユーロモニターインターナショナル、日本の消費量は冷食協数値〕   2022年10月に日本冷凍食品協会がとりまとめた「令和3年 冷凍食品に関連する諸統計」に掲載されている世界各国の「冷凍食品の国民1人当たり年間消費量」数値と、先に示した日本の消費量数値を合わせて表にしました。日本は世界5位と変化は無いですが、上位4カ国はコロナの影響やインフレの影響でしょうか、乱高下しています。従来、アメリカとイギリスがトップを競いあっていたのですが、2021年は初めてドイツがトップに。 ドイツ?と疑問に思うかもしれませんが、昔、イギリスの冷凍食品専門店を視察した際、ドイツ産の冷凍食品が意外に多くあったことを思い出しました。ドイツ在住日本人のブログなど検索してみると、ありました、冷凍食品の話題。そして、冷凍食品宅配企業が2社あり、そのサイトを見てみると、ドイツ語なのでよく分かりませんが、写真を見る限りかなりバラエティ豊かなアイテムが揃っています。多くの家庭が地下室に大きな冷凍庫を持っていて、ストックしているとか。 注目したいのは、台湾の急伸。台湾の友人に聞いてみたところ、「コロナでかなり使用量が増えた」とのことでした。朝昼晩、全て外食でOKという食文化かと思っていたのですが、コロナ禍で大きな変化が起こったようです。 早く実際に海外に行って確かめたいものですが、日本に限らず、世界の冷凍食品事情も大きく変わったのだと実感した次第。 さて、日本の1人当たり年間消費量ですが、どうやら実際は30kgぐらいになっていそうです。「冷凍食品消費大国」一歩手前まで来たということでしょうか。勝手に机上の数字を掛けたり足したりしただけですが、ご参考まで。

  • 2022年10月20日

男子、冷凍食品と共に厨房に入るべし

男子厨房に入らず、なんて誰が言い出したのかはさておき、今回は、男子こそ冷凍食品を使って料理をしてほしい、そうすれば日本の家庭は、もっと明るくハッピーになる、という話です。 今夏、某女性週刊誌の企画で、50歳『調理定年』についてどう思いますか?とのインタビューを受けました。女性は50代以降になると「料理が好き」と答える人が減少するそうです(博報堂生活総合研究所調査)。料理が好き“だった”女性、比較的料理が得意な女性でも料理が嫌いになる。これにからめて、評論家樋口恵子先生(東京家政大学名誉教授)による、女性の『調理定年』推奨を紹介する企画でした。家族のための手料理を自分の『仕事』と考えてきた女性は、高齢になったときに重圧を感じがち。仕事と同じように、休暇や定年をという主張です。 冷凍食品を使うことは、手抜きではなく「手間抜き」と主張している私の返答は、「洗濯機は全自動、掃除は掃除ロボットという時代。会社の仕事もメールやオンライン会議が多くなって、すぐに成果が挙げられるのに、家庭料理だけは手作り至上っておかしい。便利で美味しい惣菜も、冷凍食品もたくさんある。素材からの手作り料理を強いるのは、『洗濯板で洗濯物を洗え』と言っているに等しいのでは」でした。 『調理定年』は、女性週刊誌の中心読者である中高年の女性に嬉しい言葉でしょう。子どものために手作り料理を頑張ってきたけれど、子育てが終わり、夫と2人だけになってしまい、さらにリタイアした夫の食事に1日3回追われるなんて、もうたくさん!という悲鳴すら聞こえてくるようです。 女性だけが頑張り家庭を支える時代が過ぎて、、、 家庭で料理をするのは女性、男性は上げ膳据え膳で片付けもしない、という不文律は、古くから日本の常識でした。昭和を経て、平成、令和となっても大きな変化はありません。一方で、女性活躍推進とか男女共同参画などの言葉が先行して、社会でも家庭内でも働き続けている女性は増える一方。無償労働時間(家事、ケア、ボランティアなど)の男女別調査では、日本の女性は男性の5.5倍と、諸外国に比べ際立って格差が大きいのです(OECD調査数値をベースに内閣府男女共同参画局が算出 参照: https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/keikaku_kanshi/siryo/pdf/ka14-1.pdf)。 平成時代の話になりますが、食品企業で役員をしている女性がパネラーになって、聴衆の若い女性たちにキャリアアップのポイントを語るセミナーで、仕事と家庭の両立、という話題になりました。『両立』!? 最近になってようやく男性社員の育休が話題に上ってくるようになりましたが、『仕事と家庭を両立させる』って、当時の男性には全くあてはまらない言葉でした。 パネラーの一人は、「たとえば玉ねぎはまとめて1週間分皮をむいておきます。夕食作りで玉ねぎの皮をむくのは意外に時間がかかってしまって、、、」といった話をしました。いやいや、ソコじゃないんじゃありません?と心の中でつぶやいていた私。案の定、その企業では、その方に続く常勤の女性役員は未だに出てきません。 最近は世の中の風向きも変わってきました。育休から復帰したばかりの女性と久しぶりに立ち話していた時、「忙しくって、もう冷凍食品ばっかり。それでいいですよね。でも週末には疲れ切っています。え、旦那ですか?『とても無理』と宣言して、旦那には作り置き料理をやってもらってます」とのこと。 20代あたりから、徐々に変化が表われているようです。   冷凍食品は男子料理に向いている そんな折、冷凍食品宅配の老舗、SL Creations(旧シュガーレディ本社)が、男子料理向けの冷凍食品ミールキットの開発をすると発表しました。監修するのは、男子料理研究家の福本陽子先生です。1月発売の第一弾は、パスタをパエリア風に調理する「魚介の旨みたっぷりフィデウア」。3月発売予定は「特製 黒トリュフハンバーグ」です。すべて下処理済みで、生ごみは出ず、包丁を使わずキッチン鋏でOK。スマホで先生の調理デモを見ながら作業にかかれば、調理経験ゼロの人でも20分後には素晴らしく美味しい、家族が喜ぶワンランク上のメインメニューが出来上がります。 SLCreationsの男性向けミールキット めんどうな下処理は苦手だけど、かっこよくフライパンを振ってみたい男性、妻が作れないような本格料理を振る舞いたい男性に、冷凍食品を使った調理はマッチするとのこと。 確かに、玉ねぎのみじん切りだけで泣いて逃げ出しそうな方々には、冷凍玉ねぎがぴったり。さらにソテー済みならなお使い勝手がよさそうですね。冷凍食品をうまく組み合わせて使う料理は、男性ばかりでなく女性も、1人暮らしの若者も、高齢者も、料理をしてみたいお子様にも向いています。 簡単に、誰でも美味しいものができるなら、しかも後片付けが簡単なら、家族の誰がやっても楽しくできて、みんなが笑顔になれます。『手間抜き』により、短い時間で結果が出せる冷凍食品の利用が進むということは、日本の家庭が変わり、世の中が変わっていくことにつながるのです。 「男子、冷凍食品と共に厨房に入るべし」。もちろん、冷凍食品の羽根つき餃子なら、最もスピーディで超簡単、料理の成功体験が得られます。

  • 2022年9月22日

10月18日は「冷凍食品の日」、10月は「冷凍食品月間」

1年365日(4年ごとに366日)、記念日になっていない日はないようです。冷凍食品にももちろん、記念日があります。 「冷凍食品の日」は10月18日、そして10月は「冷凍食品月間」です。 日本冷凍食品協会が、1986年に「冷凍食品の日」を制定、翌年に10月を「冷凍食品月間」と定めました。由来は、冷凍の「とう(10)」で10月、冷凍食品の自主的取扱基準に基づく保存温度、マイナス18℃以下(食品衛生法の規制はマイナス15℃以下)にちなんで、18日です。また、10月は食欲の秋、食に関する話題も多いということで、10月を「月間」に設定したのです。 このように説明すると、“業界あるある”のように思えますが、この制定に至るまでには、業界人なら誰もが心しびれるエピソードがありました。   業界有志が立ち上がった!心しびれるきっかけ 1984~85年当時、好調に伸びてきた家庭用冷凍食品の勢いが急に弱くなり、「成長が止まったのでは」、「成熟期か?」といったことが業界内でささやかれていました。しかし、「いや、これは単なる踊り場。冷凍食品の良さをPRすれば、きっと再び成長軌道に乗るはず」と立ち上がった方々がいました。トップメーカーの味の素、ニチレイ、ニッスイ(日本水産)の当時の冷凍食品担当部長3氏でした。リーダーは後に味の素㈱社長に就任した故江頭邦雄氏です。 いつもはライバルとして、マーケットで熾烈なバトルを繰り広げる大手3社。その担当部長が相まみえ、業界の発展のためにと業界全体で取組むべき、冷凍食品そのもののPRについて話し合ったのです。 そして彼らの提案が協会事務局を動かし、業界を動かし、特別予算、特別協賛が組まれて、「冷凍食品市場活性化特別事業」の名称で、プロジェクトがスタートしました。その結果、「冷凍食品の日」を制定、一般の消費者を招く業界挙げてのPRイベントが1986年10月18日に実施されたのです。イベントを開き、話題を提供、マスコミに取り上げられ、広く全国の消費者に伝わることを目指す企画です。 以降、36年が経過しますが、大喪の礼の前年に中止があった以外、毎年冷食協主催のイベントが開催されています。   問屋も立ち上がり、成長軌道へ 私は専門紙記者でしたので、“業界挙げて”というフレーズを何度使用したか覚えていないくらいです。この動きは食品問屋の有志も動かしました。首都圏では問屋が会員、メーカーが賛助会員で構成する「首都圏市販冷食連絡協議会(市冷協)」が1987年に誕生します。流通に共通する課題を話し合い、スーパーで展開するキャンペーンを開始しました。現在も、冷凍食品を購入し、ハガキで応募するクローズドキャンペーンを毎年実施しています。その他地方でも数カ所、活動が盛り上がりましたが、M&Aによる流通再編の波を背景に、今では終息していてさみしい限りです。 しかし、業界人の予想通り、「冷凍食品の日」制定から程なくして、家庭用冷凍食品は再び成長の勢いを増してきます。「お弁当」商品のバラエティが広がり、瀬戸大橋開通で冷凍さぬきうどんが話題になり(1988年~)、焼きおにぎりのヒット(1989年)、電子レンジ調理のフライが登場(1994年)、自然解凍OK商品の開発(1999年)と、市場をリードする数々の開発商品が出てきたこともマーケット拡大の要因になりました。 2000年には、日本冷凍めん協会も「冷凍めんの日」を10月10日(れい:0のつく10月、とう:10日)に定め、冷凍めんの美味しさ、新鮮さを啓蒙する普及事業に取組んでいます。   まだまだ成長、夢は広がる ライバル関係を超越して、声を掛け合い、普及事業に協力する。そんな活動を実現できた業界が冷凍食品業界です。成長する勢いがあるからこそ、互いに奪い合うことなく、さまざまな方向で企業が発展していけたと思います。昨今、高級冷凍食品や冷凍食品専門店が話題になって大いに注目を集めている家庭用冷凍食品ですが、今後も成長する未来が予測できる、そんな夢が広がっている業界なのだと考えています。 資料:(一社)日本冷凍食品協会 国内生産高(業務用・家庭用別)統計の推移 2021年度の冷凍食品の日イベント (ゲストは三國清三シェフ、山口もえさん)

  • 2022年8月25日

冷凍の方が「栄養が摂れる?!」37年前の『事件』

「女子栄養大学の吉田企世子先生から電話がかかってきてね、どうもおかしいって言うんだけど、『先生、まったくおかしくありません。当然です』ってお答えしたんだ」と得意顔で語った、日本冷凍食品協会の比佐勤常務理事(当時、後に専務理事)の顔が浮かびます。下表「生鮮ほうれん草と冷凍ほうれん草のビタミンCが含有量」を見るたびに蘇る思い出です。もう37年前のことなんですね。 (一社)日本冷凍食品協会ホームページより 当時の女子栄養大学の研究室、吉田先生は学生に、生鮮のほうれん草と冷凍のほうれん草のビタミンC量を計測して比べるという課題を与えました。ところが、何度計っても生より冷凍の方が格段にビタミンC量が多く、「おかしい」ということになって、冷凍食品協会に問い合わせたのです。野菜・果実の栄養成分、品質研究が専門分野であった吉田先生ですが、生鮮・冷凍の分析結果は同等か生鮮が勝る、と予測していたのでしょうね。その時期は、表にある6月、初夏のことだったと推察できます。 冷凍野菜はいつでも『旬』 問い合わせを受けた比佐氏は、冷凍食品の賞味期限は約1年間なので、冷凍野菜は最も生鮮品が多く出回り価格も安定している旬の時期にまとめて生産できること。旬の野菜が美味しく栄養価が高いことは当然。冷凍野菜はブランチング(下ゆで)して急速凍結していること。急速凍結は食品の組織をなるべく壊さずに凍らせておく技術なので、適切に解凍すれば栄養価は旬の時期そのままであること、などを解説したそうです。 そう、ほうれん草の旬は冬場。その組織が壊れないように保たれているということは、冷凍ほうれん草はいつでも『旬』。説得力があります。 テレビで公開された最新実験結果でも、冷凍ほうれん草の「旬」の栄養を確認。 https://frozenfoodpress.com/2022/08/27/asaichi-frozen-vegi-vitaminc/ その当時、生鮮野菜と冷凍野菜の栄養量を比べる実験を行った例はなく、業界にとっては朗報、大喜びであったと思います。実際、それ以降、冷凍食品協会は、吉田先生の研究結果(1985年)を活用して、冷凍食品のメリットをPRしています。 余談ですが、「日本食品標準成分表」に、ほうれん草の栄養成分が、通年平均と夏採り・冬採り別に掲載されるようになったのは、2015年改訂(七訂)からです。  -18℃以下で1年間、これが経済的メリット 「冷凍食品では栄養が摂れない」「冷凍したら当然栄養は壊れているはず」といった誤解は、なかなか払拭できずにいるのですが、旬の時期に凍結した野菜と端境期の生野菜の栄養成分比較にふれると、皆一様にびっくりします。 年1回、旬の時期に作る、という話も、四季が巡って1年が経つ日本の消費者の感覚にフィットする話ですね。 さて、冷凍食品メーカーの多くが採用している約1年間という賞味期限、これは、-18℃以下を保って保管するという大前提の条件があります。もっと低い温度帯なら、賞味期限はより長く延ばすことができるのですが、製造した時の品質がほぼ同等に1年保つことができて、経済的にメリットのある温度帯として-18℃以下(華氏では0℉以下)が選ばれています(国際規格のコーデックス規格も同様)。 「グリーンピースのビタミンC保持に及ぼす温度の影響」(デートリッヒ、1957年)のグラフをご覧ください。急角度でビタミンC量が減少していく他の温度帯に比較して、-18℃以下ではほとんどと言ってよいほど保存日数の影響が低いことが表われています。 ちなみに、日本の食品衛生法による冷凍食品の品温は、微生物が繁殖できない-15℃以下と定められています。冷凍食品業界は、国の基準より厳しい国際規格を自主規格として採用し、より良い品質保持に努めているのです。  栄養バランスの良い食事は、、、自分で考えましょう 冷凍食品だけ食べてくださいとは言っていないのですが、時折、「冷凍食品ばかり食べて山本さんの健康状態が心配です」という意味不明のお気遣いをいただくことがあります。 ほぼ健康です。リスクは酒量のみ、と認識してできるだけ適量摂取に努力しております。 同じように「外食ばかりだと栄養が偏る」といった話も昔からよく聞きます。なんか変、と常々思ってきました。何をどれだけの量食べるかを考えて食事をすること、これは基本的な生きる力ではないでしょうか。 学校給食を長く取材していましたが、1日のバランス、1週間のバランスを考えること。多少太っていても気にせず、健康に過ごしている今より太らないように気をつけること、などなど、栄養指導をされている先生方からさまざまなお話をうかがいました。 冷凍食品はほぼ全ての商品に栄養表示があります。原材料も分かります。とても便利ですね。何を加えてバランスを取れば良いかが分かります。 かつて、大阪のテレビ番組に出演した際、「肉、野菜、炭水化物すべて入っている。餃子は”完全食”や」と力説した芸人さんがいらっしゃいました。ピザも似ています。 え、問題は量? 確かに。美味しいものはたくさん食べたくなりますからねぇ。

  • 2022年7月21日

冷凍食品買い方指南  カギは“コールド・チェーン”なのです

真夏、プールを出てアイスバーを頬張る至福の時、最後のひとくちがポトッと落ちて〈涙〉という経験、ソフトクリームがへなへなになって手がベトベトという経験、ありますか?私は、ボーっと考えごとをして、うかつに生きている子どもだったので、よくありました。 アイスはとけるまえに食べる!うっかりとけてしまったものを再凍結すると美味しくない!これ、鉄則ですね。スーパーでアイスを買おうというとき、お店に入って最初にカゴに入れる人はいないはず。特に夏は要注意です。買い物の最後にカゴに入れて、すぐレジにGO! 保冷剤かドライアイスを買うかもらうかして、まっすぐ家に帰り、すぐ冷凍庫にしまわなくてはいけません。 ところが、冷凍食品はというと、アイスほどには気遣っていただけていないような気がします。 ということで、今回は、「冷凍食品買い方指南」。 サブタイトルに掲げたように、そのカギは“コールド・チェーン”です。 お店では最後に買って保冷バッグ&保冷剤 『時間を止めて(急速凍結)』、『空間を超越する(マイナス18℃以下の保存・流通)』冷凍食品【前稿ご参照くださいませ】。マイナス18℃以下のコールド・チェーンをつなげて、売場に並べるまでは業界の仕事ですが、それ以降は、買い物をした皆様に託されています。 「チェーン(鎖)」をピンと張れば一直線ですが、どこかひとつの輪が切れたら、じゃらじゃらと落ちてしまいます。売場から皆様のご家庭の冷凍庫まで、ずーっとチェーンがピンと張れているかどうか、まずは意識することからスタートしましょう。 今やエコバッグの時代、冷凍食品を買う時は普通のエコバッグではなく、保冷バッグ持参を忘れずに。家を出るとき、冷凍庫にある保冷剤を入れておけばなお良いですね。保冷剤やドライアイスが有料の店もあるので、持参した方が節約になり、しかもエコフレンドリーです。 お店の中では、アイスと一緒に最後にカゴに入れて、すぐレジに向かいましょう。そして、保冷剤を持参してなければ、店でドライアイスや保冷剤を入手。そして、冷凍食品の上に置いて、しっかりチャックを閉めましょう。冷気は上から下に流れるのです。 注意したいのは、氷を使うのはNGということ。氷は冷凍庫から出してしまうとすぐ温度が上昇していきます。レジ横に置いてある氷は要冷蔵食品(10℃以下)の保冷用です。氷は、マイナス18℃以下の冷凍食品に接していると、時間の経過と共に冷凍食品の温度を上げてしまうことになるのです。 おうちでは 帰宅したら真っ先に、冷凍食品を冷凍庫にしまいましょう。そう、コールド・チェーンの最後のところです。 保管場所は、自分の使いやすいように、庫内を大きく4分割などして番地を決め、どこに何を納めるかをはっきり決めておくと良いですね。開け閉めの時間は短いほど良いですから。あれ。どこかなと探しているうちに庫内温度はどんどん上がってしまいます。 小分けにして使うものは、一度開封したら取り出し易い場所にまとめておくのも良い方法です。小分け使用の商品は、残りをジッパーバッグなどで保存するのも賢いやり方。乾燥しやすい麵類などは特におすすめです。 そして、『冷凍庫はみっちり保管』と記憶してください。空間が大きいと冷凍庫を開け閉めしたときにその空間に外気が入り込み、温度変化が起こりやすくなります、使った分を買い足していき、常にたくさん入った状態がベスト。 最後に注意いただきたいのは、冷凍=永遠ではない、ということです。 庫内が狭い家庭の冷凍庫は扉の開閉によって温度変化にさらされますので、家電メーカーでは、保存期間の目安は「3ヶ月」としています。もちろんそれを過ぎても腐らないのが冷凍の優れているところなんですが、印字されている賞味期限が何ヶ月先でも、買ってから2~3ヶ月以内を心がけて使い切るのが美味しく食べるコツなのです。 最近の冷凍食品はどれを食べても美味しくって、間違いなし。でも、せっかく美味しい冷凍食品を買っても、食卓できちんと100%の美味しさを再現しなくては、もったいない!!美味しく食べる第一歩は「買い方」。売場から家庭の冷凍庫までのコールド・チェーンがカギなのです。

  • 2022年6月16日

冷凍食品ジャーナリスト山本純子の
『冷凍食品のはなし』vol.1

1960年代のテレビアニメ、「スーパージェッター」をご存じでしょうか? 昭和のことはもはや故事、古典となってしまった令和の時代にこんな話題を振ると、なんか迷惑な年寄りになってしまいますが、『時の流れを超えてやってきた』少年ジェッタ-は、本当にかっこよかった。 ジェッターは、腕時計のようなもので「流星号応答せよ!」を呼びつけ(今のApple Watch風?)、どこから来るのやら空を飛んできて重量を無視して浮いているそやつに飛び乗り、マッハ15のスピードで飛んでいきます。少年少女の未来へのあこがれが詰まったアニメは、1965年1月7日にスタートし、最終回が1966年1月20日とのこと(何事もすぐ検索できる便利な未来になりました)。さて、その当時の家庭用冷凍食品はというと、1963年にスーパーの先駆け、ダイエー三宮店に初めて冷凍食品売場が登場し、ものすごいスピードで出店が続いたスーパーを通じて、人々の生活の中に入り始めた時期でした。 何が言いたいのかというと、時の流れを超える、未来から来たような『時空間超越』こそが冷凍食品の神髄、かっこよさ、ということです。   旬の食材も出来たての料理も、有名シェフのレシピによるごちそうも、急速凍結という手段で『時間を止める』。 そして-18℃以下という低温で保存して流通することで、約1年~2年、腐ることなく元の鮮度と品質を保ちながら、日本国内どこへでも、場合によっては海外へも、はたまた将来には宇宙にだって移動できる。行列ができるような有名店監修のラーメンも家庭にいながら楽しめる。つまり、『空間を超越できる』のが冷凍食品なのです。   『時空を止めて空間を超越する』というフレーズ、実は、わが国食品冷凍学の権威、鈴木徹先生(東京海洋大学特任教授)からお墨付きをいただいたもの。先生がかねてより唱えてこられた、「食品冷凍技術システム論」を私なりに解釈して表現したものです。 あるとき、「冷凍食品の最大のメリットとは?」と鈴木先生に聞かれ、「腐らないことです」と答えたところ、「そうだ!」と鈴木先生。「つまり、時間を止めて空間を超越する手段ってことですね」と私が言うと、「うまい表現だね」と褒めていただけた、という経緯です。 もちろん、時空間超越が可能になってから最後、冷凍庫から出して食卓に上るまでの扱いも重要です。システム論の『解凍・調理』のところを上手にこなすことが美味しさにつながります。“適切に解凍・調理をする”ことは、食べる皆様、厨房で調理する料理人の手に委ねられています。上手に解凍・調理して、素早く、美味しく、楽しく、快適な冷凍食品ライフを楽しんで頂きたいと思います。