羽根つき餃子、ぷるもち水餃子の大阪王将│5フリーで食卓へお届け

人がほとんどいない工場が今どき~しかも「停まらない!」 それは人間愛かも

今回は『工場のはなし』です。

“食品工場の自動化・DX展”とうたっている「第3回フードテック ジャパン」(2022年12月7日-9日、幕張メッセ)会場で、取材をしていた時の会話。

「なるほど、この機械が完成したら、この場所で作業していた人たちがいなくなる訳ですね。じゃあ例えば一千万円払っても、給料を考えたらすぐ元がとれる。2年くらいで」

「いえいえ、16時間連続で動いてくれますから倍で考えてください」

「そうか!二交代」

「しかも歩留まりがいいです。レシピ通り。誤差は2%未満! 人の場合は10%近く」

「それもすごい。コストアップが深刻な昨今、即採用ですね」

少し沈黙があり、にっこりして、

「人が1日中ずっと同じことを繰り返すなんて、そんなつらい仕事はもう無くしていかないと、、、」

コストのことばかり考えていた自分を恥じました。そして、チャップリンが機械の歯車に挟まれる映画のシーンが浮かんだのです。ああ、この方は、世のため人のためになる食品機械の開発が嬉しくて、生きがいなんだと敬服した次第。展示会場には、DX、IoT、AI、ロボットなどなど、さまざまな無機質な横文字が溢れていましたが、技術開発の原動力は人間愛かも、と考えながら帰路につきました。

都市化が進むと共に、商品は効率よく生産され、付加価値を付け、流通、販売、消費されていく訳ですが、その便利さのために、人に負担のかかる作業が必須になるという矛盾もありました。それはモノクロ映画の時代からの大問題。それがすっきり解決されていく、というのが今どきの工場です。

 

日本最大最速級の餃子工場は『停まらない』

2022年9月に竣工、11月に稼働開始したイートアンドフーズ関東第三工場も、まさに今どきの工場です。しかもかなり先を進んでいます。そのキャッチフレーズが「停まらない工場」(仲田社長)です。

「停まらない」って、忙しそうな感じに聞こえますが、製造ラインに人は数えるほどしか見当たりません。AI、IoTを活用して、餃子の生産工程を一括管理しているからです。ちゃんと餃子が包まれているか、トレイに規定の個数がはいっているかなどなど、監視チェックしているのは、人に代ってカメラです。カメラは、いわばコンピューターの目。人の目よりも正確に、大量に学習している情報に基づいて不備のあるものはラインからはじいていきます。

▲人手がほとんど不要という餃子成型ライン。「ずーっと見ていたい」と熱心に見学する冷凍食品マイスター、タケムラダイさん㊥、㊨は自慢の工場が完成してニッコリ、イートアンドフーズ山本浩専務。

自動化装置は最先端です。餃子の原材料は別室で下処理したものをAGV(無人搬送機)が一時保管庫の前まで運んでいます。大量の重い原材料を人力で押して運ばずとも良いのです。

そして、「停まらない」との言葉を生んだ、画期的なアキューム装置(トラブル対応中の製品の一時回避装置)。これには驚きました。

もちろん、大量生産する冷凍食品工場では、稼働時間中フル稼働して、生産計画通りに、流れるように製造するのが理想的。しかし、いくつかの製造工程の中でひとつトラブルが起こるとその流れがストップ、ロスタイムとなります。ちょこちょこ停止することを「ちょこ停」と言うそうですが、その「ちょこ停」が起こる度に生産効率は低下します。つまり、それがコストアップにもつながってしまうということです。それを避けるのがアキュームレーション。日本語では「蓄積」でしょうか。
数年前、アキューム機能を他のメーカーでも見たことがありますが、それは、トラブルが起こった時に、その前工程の速度を低下させるものでした。当時も「コンピューターってすごい」と驚いたものですが、今回導入されたイートアンドフーズのアキューム装置は、さらなる驚きがありました。生産速度を落とさず、さらに、凍結した製品の品質をしっかりと保っているのです。

トラブル解消後のアキューム装置動作に胸がときめく

イートアンドフーズ関東第三工場のアキューム装置は、包装ラインにトラブルが起こった時に作動、餃子のトレイを並べて、1段、また1段と装置に積み上げていきます。そして、中は保冷機能付き。

トラブル解決後は、積み上げていた餃子のトレイを少しずつラインに戻していきます。その戻し方がすごい。ラインの流れを止めず、頃合いを見て1つずつと丁寧なのです。まるで高速道路のパーキングエリアから、運転のうまいドライバーが本線に合流するかのような手際の良さ。思わず機械に向かって「えらい!上手!賢い!」と褒めていました。

冷凍食品にとってとても重要なポイントのひとつにコールド・チェーンがあります。出荷から流通・販売、そして調理されるまでの冷凍庫での保管状態も含め、マイナス18℃以下の温度帯を繋いで保つことです。これまで、その品温管理は工場出荷の段階からと考えていましたが、同工場のアキューム装置を見て改めました。

製造工程でも品質維持を重視するきめ細やかな配慮。同社の『餃子愛』を強く感じた視察でした。

もちろん、機械も間違うことがあるでしょう。それをコントロールするのが人の仕事。

美味しい冷凍食品は人を幸せにしてくれます。そして、美味しい冷凍食品を作る人たちが幸せであることも重要と、しみじみ感じ入っている2022年末です。