「冷凍ラーメン」が伸びています!
冷凍食品のラーメンに加えて、“冷凍”で販売されているラーメンも含めて「冷凍ラーメン」と呼ばれるようになったのは、過去数年のこと。日本の国民食といえる「ラーメン」の中で、“冷凍”が最新ジャンルのラーメンとして注目され、需要が伸びています。
コロナ渦中に注目を集めた「冷凍自販機」の販売商品として、いち早く注目を集めたのもラーメンでした。
大手メーカーによる2023年秋冬の家庭用冷凍食品新商品も、ラーメン(中華麺)が最も注目されるカテゴリーになりました。テーブルマークは新発売の「まるぐ」ラーメンで、DJ KOOさんを起用したキラキラ・ノリノリのTVCMをこの9月からスタート。「具たくさんでGOOO!」なラーメンと訴えています。
さて、冷凍食品ファンの皆さまなら、具だくさんラーメンといえば、マルハニチロの「新中華街 横浜あんかけラーメン」、ニッスイの「わが家の麺自慢 ちゃんぽん」のラーメン両雄を思い出しますよね。発売25年超え、35年超えの人気商品です。
なぜ?今、具だくさんなのでしょう。推測ですが、おそらく「冷凍ラーメン」と言われるようになってから、より多くの方々から注目される商品になり、アプローチのしかたも変化してきたのではないかと思うのです。さまざまな商品が市場に出回る中で、冷凍だから提供できる高品質に気づく方々が増えることになりそうです。
ということで、今回は「冷凍ラーメン」について考えてみましょう。
■「国民食」のはずが「ラーメン店離れ」現象?
ラーメンは世界各国で人気を得ている日本食、というのは今や常識になりました。ラーメンをズズッとすすれる欧米人は、「私はクールだ!」と自慢するのだとか。訪日観光客も本場日本のラーメンが目当てという人が多いようです。
さぞかしラーメン業界は盛り上がっていることだろうと思っていたら、先日開催された「ラーメン産業展」(9/13~14、東京ビッグサイト)の開催趣旨の一文にびっくり。曰く『顧客の「ラーメン店離れ」が続いている状況』で『ラーメン業界の活性化・需要創造・販路拡大』を開催理念にというのです。
昨年秋、駒沢公園で開かれた東京ラーメンフェスタのイベントに出向いた時は、その熱気、行列に驚いたものです。「ラーメン店離れ」なんて、そんなはずはないだろうと聞いてみたら、どうやらラーメン愛好家が再生産されていない様子。
確かに昭和生まれの我々は、二次会三次会まで飲み歩き、シメのラーメンでビールを1杯飲んでやっと帰るという不健康習慣を常としていました。そして人気ラーメン店の注文の仕方も必至に覚えましたね。しかし、今どきは酒もほどほど、全く飲まない学生も多くなったと聞きます。がんこ親父がいそうなラーメン店も敬遠されそう。
さらに、塩分、炭水化物大量摂取もマイナスポイント。そして、1杯のラーメン800円以上など、お店で食べるラーメンのコスパが低下。おまけにコロナ禍中においてラーメン店は大打撃を受け、昨今は更なる値上げと苦境が続いています。
もちろん、ラーメンは根強い人気メニューであることに変わりはないのですが、足を運び相応の満足感を得られるかという価値観において、ラーメン店はかなり厳しい環境下にあるようです。
■冷凍食品が注目を集め、奥様のお昼ごはんから脱却
「冷凍ラーメン」に話を戻しましょう。今になってブームといわれているのですが、じゃあ過去はどうだったかというと、売場に「ちゃんぽん」と「横浜あんかけ」があればOKという程度の売れ行きでした。冷凍食品業界が長年ターゲットとしてきた主婦層に受ける、お昼ごはん用のこの2品があればよくて、バラエティは強く求められていなかったのですね。
もちろん、じわじわと変化は起きていました。キンレイが『お水がいらない』シリーズを発売したのは2010年。看板商品の鍋焼うどんが冬場需要に偏った商品であることから、周年売れるラーメンの開発も併行して進めて、それが人気を得てきました。「ラーメン横綱」「横浜家系ラーメン」「塩元帥塩ラーメン」とご当地“監修”タイプのラーメンを続々と出して、売場の景色が変わってきました。
冷凍ラーメンでは、日清食品冷凍の取組みが早かったのですが、注目を集めるようになったのは、“汁なし”ジャンルの中華めん「冷凍 日清中華 汁なし担々麺大盛り」のヒットからでした。同品は2013年に発売し、現在の別添花椒入りスパイスを付けるリニューアルをした2015年からブレイクした商品です。いわゆる「シビ辛」ブームを起こした商品。
同社では、汁なしタイプ中華めんメニューを充実して、さらに汁ありでは“生麺ゆでたて凍結製法”の開発による『日清本麺』の発売に至りました。そして、冷凍ラーメンのコーナー化「ラーメン横丁」戦略を進めています。
■餃子の相棒、ラーメンの人気は必然
コロナ禍を契機に、老若男女あらゆる消費者が冷凍食品のユーザーに広がったことも、新たなカテゴリーへの注目度を高めていきました。
昨年は、満を持してニチレイフーズが冷凍めん「冷やし中華」を発売。氷の特性を応用した、電子レンジのワンクックで冷たい麺ができる技術に世間が驚いたのです。
もちろん、従来の2強も対抗して中華麺に注力しています。マルハニチロは、「あんかけ焼そば」の生産体制を強化して、さらに魚介系スープの有名店コラボラーメンの開発に力を入れています。
ニッスイも、汁無しタイプに続き、今秋は王道を攻めて「味噌ラーメン」を発売しました。
『大阪王将』ブランドの冷凍食品、イートアンドフーズも、餃子、炒飯、から揚げの次にラーメンを開発して、「街中華の定食」戦略を打っていますね。
今秋、ラーメンの具にぴったりと発売した「暴走背脂ニンニクぶた餃」も、おもしろい提案です。
そう、家庭用冷凍食品の一番人気アイテムが餃子なら、その相棒、ラーメンも人気カテゴリーになるのは必至なのです。
■生産食数3割アップ! これからも注目カテゴリー
「ラーメン店離れ」の背景に、店舗に出向かなくとも美味しいラーメンが食べられる、という新しい価値観を「冷凍ラーメン」が提供していることがあるかもしれません。しかも、店舗で食べる半額以下というコスパにインパクトがあります。
「冷凍ラーメン」が伸びていると冒頭に書きましたが、大手メーカーの統計(日本冷凍めん協会調査)では、昨年の冷凍めん生産食数20億食のうち、3億5千万食がラーメン。その3億5千万食のうち市販用は1億6千万食です。比率は少ないのですが、前年に比較して3割アップしています。
インスタントラーメン(カップめん、袋めん、生タイプ)が日本国内60億食(59億9914万食:2022年度日本即席食品工業協会調べ)に迫っている数値であることから見ると、市販用冷凍ラーメンの1億6千万食は、まだまだ食シーンに大きく影響する数字ではないように思えます。しかし、現在の勢いで伸び続けると想定したらどうでしょう。2億食、3億食と存在感を示す存在に成長していきそうです。
「輸出」の可能性も無視できません。実際、「西山ラーメン」(西山製麺)は、札幌ラーメンを世界に広めるべく海外を視野に入れてきましたが、10年前にドイツに販売拠点を開設し、続いて中東、北米にと販路を広げています。同社ではハラル対応のラーメン(写真)も開発しています。
また、味の素は東洋水産(マルちゃん)と合弁で、米国に冷凍めん工場を持ち(2015年~)、日本式RAMENを販売しています。
日本のラーメンは世界のRAMENに。もちろん、「冷凍ラーメン」の可能性も限りなく広がっていくのです。