- 2025年11月26日
冷凍食品は「生鮮五品め」
冷凍野菜が大人気~天候不順・価格高騰の青果 最近冷凍野菜や冷凍フルーツ(主にブルーベリー)が大人気です。ブルーベリーが売れている原因は、やはり、皆さま男女を問わず、スマホを見過ぎて目が疲れているのかなぁと推察していますが、冷凍野菜の人気上昇ぶりには驚くことばかり。 春頃、イオンのバイヤー筋から聞いたところによると、「ブロッコリーの500g入りが売上1位になりました。冷凍野菜が1位になったのは初めてのこと」だそうです。確かにキャベツの高騰で年明けから大騒ぎだった今年。夏の猛暑をはじめ大雨などの天候不順が、生鮮品の価格変動に一層大きな影響を及ぼしています。 「スライスきゅうり」も春先に話題となりました。ポテトサラダ用や酢の物などに、すぐ使える人手不足解消食材と業務用需要で人気に火が付き、イオンPBの家庭用で発売されるや、これは便利と人気商品に。確かに、単身世帯ならきゅうり1本を持て余すなんてことも起こりそう。冷凍野菜は少し割高でも価格は安定、小分けに使えてロスもなく、結局はリーズナブルだと受け止められるようになりました。 栄養価しっかり、冷凍のメリットに認知高まる 本コラムでもかつて、冷凍野菜の栄養価はしっかり保持されていて、端境期に収穫した生鮮品より冷凍野菜の栄養価の方が高いこともある、とご紹介しました。業界では長く「常識」だったこの認識は、徐々に消費者の皆さまに浸透しつつあります。 価格が1年のうち最も安く、おいしい「旬」の時期に製造する冷凍野菜が、栄養価たっぷりなのは当然、なのです。でも、そうはいっても生鮮の方が良い、という意識は根強かったと思います。 ところが、9月24日に冷凍食品をテーマに放送された「ホンマでっか?TV」(フジテレビ)の2時間スペシャルで、解説者の一人である医者の先生から、「日数の経った生鮮野菜より冷凍野菜の方が、栄養価が高い」との説明がありました。 それは、ブロッコリーの事例で、生鮮ブロッコリーを常温で保管すると7日でビタミンC量はほぼ半減するが、冷凍ブロッコリーは、ブランチング処理(主に短時間茹でる下処理)で若干ビタミンC量は下がるものの、急速凍結・冷凍保管でその後ずっとビタミンC量を維持する、という内容でした。その「常識」にMCの明石家さんまさんはじめ出演タレント陣から驚きの声が上がりました。食品冷凍学の権威である鈴木徹先生も出演していましたが、休憩時に、「あたりまえ。まだ分かってないのか、、、」とため息、でした。 野菜に限らず、肉も魚も調理品も。冷凍することはすなわち、鮮度を保つ手段なのです。 生鮮品の「とれたて」と、調理食品の「できたて」の時間を止めることができるのが、急速凍結の技術。そして、マイナス18℃以下の低温保管は、微生物が繁殖できない温度帯で化学的な反応も非常にゆるやかになります。つまり、食品は腐らず、約1年間、栄養価や味わいなど、最初の品質を保持することができます。 生鮮野菜の栄養価は季節変動する 出典:女子栄養大学栄養学部 辻村卓教授報告書より引用 1980年代に聞いた「生鮮四品」 さて、「新鮮」の代名詞ともいえる生鮮三品とは、青果、鮮魚、精肉ですね。鮮度の良い生鮮品は、おいしさに繋がります。そんな「常識」をもって私が記者活動を始めた1980年代は、「惣菜」がひとつの産業として開花した時代でした。惣菜産業界をリードしている団体、日本惣菜協会は、1977年に任意法人として創立し、1977年社団法人認可(現在は一般社団法人)となっています。 そんな時代、惣菜界の重鎮を取材した折に、「山本さん、生鮮三品は分かるだろう。惣菜はね、生鮮の四品めなんだよ」と聞きました。「確かにサラダはそうですね」と私。すると「いやいや惣菜全部だよ。だって賞味期限が1日だろ」と重鎮。1985年、CODEX規格(国際的な食品規格)によって、賞味期限表示が導入された頃であったと思います。 国際規格普及の頃に、その重鎮はうまいことを思いついたと悦に入っていたと想像します。 ふと思いついた「生鮮五品」 「惣菜を加えて生鮮四品」、長らくこの話は記憶の片隅にあったのですが、今から5年前にふとよみがえり、生鮮より鮮度が高いなら冷凍食品は「生鮮五品め」と言ってよいのでは、と思い至りました。 近年、講演などを依頼された時には、冷凍食品は生鮮五品め、というスライドを1枚作って説明しています。 「生鮮」ならふさわしい売場の位置があります。つまりスーパーの壁面やレジ近く。私はイトーヨーカドーが実践している、惣菜売場の対面の位置に配置する冷凍食品売場に大賛成です。 スーパーに入り、作りたいメニューを考えながら、カゴの中に野菜・果物、日配品(卵、豆腐、納豆ほか)、鮮魚、精肉売場と歩いて、数日で消費するものを選び、途中で常温品や日用品などを選ぶ。最後に当日消費する惣菜を選んで、さらに“賞味期限が長いフレッシュ”である冷凍食品をカゴに入れて即レジへ直行。もちろん、惣菜といっしょに当日食べたい冷凍食品をピックアップしてもOK。 支払いを済ませたら、冷凍食品は他のものとは別の保冷バッグに入れ、ドライアイスや保冷剤を使用して持ち帰り、帰宅後すぐ冷凍庫に保管する。以上がわが家の「生鮮五品」感覚の買い物スタイルです。 Fresher than Fresh!(生より新鮮!) 本コラムをスタートした頃に、アメリカで昔使われていた冷凍食品のキャッチフレーズ、「Fresher than Fresh!(生より新鮮!)」を紹介しました。欧米の人々は、冷凍が鮮度を保つ手段である、と認識しています。 先日、日本冷凍食品協会から「令和6年 冷凍食品に関連する諸統計」(令和7年10月)が発刊となりました。その中に2024年の世界各国の国民1人当たりの年間冷凍食品消費量(資料:ユーロモニターインターナショナル)が掲載されています。冷食協の同年統計と比較してみると、日本の同消費量は万年5位。しかもベスト4の国々の数量に比較すると依然格差があります。 この格差は、日本でFresher than Fresh!の認識がさらに広がることにより解消されるのではないかと期待しています。 資料:「ユーロモニターインターナショナル」、日本の数値のみ日本冷凍食品協会統計より











