- 2025年6月30日
安心と信頼の食~生協が冷凍食品のメリットを広める力に~
日本生協連・新井ちとせ代表理事会長~戦後80年初の女性会長 日本生活共同組合連合会(日本生協連)の2025年総会(6月13日)で、新代表理事会長に新井ちとせ氏が就任しました。副会長からの昇任により、初の女性会長が誕生したのです。 日本生協連の記者発表資料より 日本生協連の前身である日本協同組合同盟は、1945年、終戦の年に設立されましたので、まさに、戦後80年の今年、新しい時代になったのだなぁと感じ入っています。 消費生活協同組合(生協)の大半は、地域のくらしの中で組織された地域生協が占めていて、地域でつながりを持ったのは、主婦である女性が中心。日々の活動も商品購買も女性が消費者目線から声を上げて進めてきたのです。組織をリードする女性の誕生は、もっと早くても良かったのではないかと思うほどです。 日本生協連の組合員数は、3,080万人。世帯加入率は39.4%(世帯数で組合員数を割っています)。全国の総事業高は3兆8千億円(2024年度推計)、商品販売高に相当する供給高は3兆3千億円近く(同)。日本生協連は、そんな全国の生協を束ねる組織です。 週1回の共同購入、「冷凍食品」が計画的な消費を支えました さて、なぜ「冷凍食品のはなし」に生協が出てくるのかというと、生協組合員の方はよくお分かりと思いますが、一応ご説明。 地域生協の事業活動は、くらしを守る・平和を願う活動、そして消費生活を支える活動の両輪で動いてきました。消費生活では主に食料品で、より安全で安心できる商品を見つけ、また開発し(コープ商品)、共同購入することによって、よりリーズナブルに手に入れるという活動が進んできました。 今では1軒ずつに配達する個配が主流で班配達は減少しましたが、始まりは、地域で班をつくり、注文をまとめて1カ所に配達してもらう共同購入のみでした。配達は曜日ごと週に1回。当然足の早いものは、週1回ではすべて賄えない。そこで、安全に供給できて、1週間分を賄えて、無駄なく計画的に消費できる冷凍品・冷凍食品の普及に力を入れることになります。 1960年代には、家庭に冷凍冷蔵庫が普及したとはいえ、冷凍食品がどんな食品か、どうやって保存して調理するのかなど、当初消費者にとっては未知の世界。そこで、生協は地域活動として勉強会を開催したり、週1回配布されるチラシ(カタログ)で商品知識を啓蒙したりしてきました。そして、生産者と連携し、食品の計画的な購入に力を入れてきたのです。 冷凍食品業界にとっては、恩人と言っても良いかもしれません。 魚や肉も冷凍がフレッシュ 最近、冷凍サバが注目されたり、カット済みの冷凍肉が重宝されたりという話題を耳にしますが、生協組合員にとっては、あたりまえのこと。 我が家でも、パラパラミンチ(ミンチ肉がバラ凍結されていて必要な量、手軽に使える)やお米育ち豚の冷凍スライスは常備食材です。魚の切身、加工品も冷凍がよりフレッシュ。ノルウェーさばを加工した「CO・OP 骨とり鯖の味噌煮」は秀逸で、大ヒット、大人気商品です。 さまざまな商品が開発されて、人気を得ていますが、なぜそうなるのかといえば、1つ確かなことは、コールドチェーンを厳格に保って宅配されているから、と言えるでしょう。つまり、品質が良いのです。 個配の場合、共稼ぎ世帯も多く、玄関先に置き配することも多いと思いますが、発砲スチロールの通い箱に、超低温の保冷パック、さらにドライアイス噴霧で届けられています。そして断熱材で覆う配慮も。 スーパーで買い物をした場合、ここまで厳格に保冷して持ち帰る方はまれかと思います。つまり、買い物の持ち帰りは温度変化、品質ダウンのリスクが高いのです。生協宅配は、冷凍食品にとって、非常に優秀な流通システムだと確信しています。 離乳食「きらきらステップ」こそ冷凍メリット100% 日本生協連が冷凍食品で離乳食「きらきらステップ」を開発したときには、我が意を得たりと喜びました。アメリカのスーパーを視察すると必ずある乳幼児向けの冷凍食品。それを日本で実現したのは生協でした。 白身魚をほぐしただけの冷凍食品、おかゆや野菜のうらごしをキューブ状に冷凍した商品は、無添加で凍結しただけのもの。そして解凍すればフレッシュ。急速凍結技術があってこそ、こんな開発商品がお届けできるのです。 同シリーズは、若い世代の組合員獲得に大きな力を発揮しているようです。 組合員の声が商品に届く 生協のPB、コープ商品(CO・OP)は、組合員の声を生かして開発されます。大阪王将ブランドの冷凍餃子も、コープの取り扱いからのスタートと聞いています。現在市販製品に印刷されている、「素材のチカラ(5フリー)」マークの商品づくりも、長年組合員、消費者の声に耳を傾けてきたからこそと認識しています。 前述の離乳食も、子育て層の組合員と共に商品開発に取り組んだと聞いています。 国内生産者を支援するという思いも同様、さまざまな冷凍野菜の開発に結果を見ることができます。 くらしを守る、社会に目を向けるという活動は、生活に密着した食品購買が始まりです。広くつながり、互いに支え合うことを考える生協としては、日々使う商品が公正であること(倫理にかなうこと)も重視します。『エシカル消費』という言葉、商品開発も生協がいち早く取り組んできたことです。 エコマーク、サステナブルな漁業で漁獲した魚、フェアトレード、寄付を伴う商品購入などなど、2024年度の日本生協連のエシカル商品対応商品は、前年比109.7%の2,696億円となっています。 今年は国連の国際協同組合年 国連は2025年を国際協同組合年と決議しました。2012年に続くことで、こんな短期サイクルで迎えた国際年は異例とのことです。日本でも、今年5月、「国際協同組合年に当たり協同組合の振興を図る決議」が衆議院本会議、参議院本会議で採択されました。被災地支援、復興に生協の相互支援の力が、どこよりも長く力強く続いていることと無縁ではありません。 冷凍食品の話からは少し外れますが、冷凍食品普及を介して、生協ウォッチャーとして長年取材を続けてきた私の想いを一つ。日本は被爆80年の年。生協を介した平和希求の声が広く強く響くとこを願って止みません。