ますます注目されてきた冷凍食品の価値
手前味噌で恐縮ですが、「あ、冷凍食品の人でしょ!」とよく声をかけられるようになりました。新聞社から独立してちょうど10年、テレビ、ラジオ、雑誌、webなど、メディアからの取材依頼や出演オファーは、時間の許す限り引き受けてきたのですが、今年は既にテレビだけでも16件の対応と、例年より依頼が増えています。
2020年春からのコロナ禍は、家庭用冷凍食品の需要拡大エポックになりましたが、どうやら今年は、冷凍食品、冷凍野菜、冷凍フルーツなどに、ますます注目が集まり、一大ブームになっているようなのです。
物価上昇~でも冷凍食品はコスパ良し
「冷凍食品が人気ですが、なぜ今注目されているのでしょう」という問いに、今年は、「コスパとタイパですね」と答えています。その回答は、最初、注目を集めているワンプレート冷凍食品に関する質問に対して用意したものですが、これはどうやら、冷凍食品全般に言えるメリットとなってきたようです。
その背景には、あらゆるものの価格が上昇し、特に食品の高騰は生活を直撃していること。昨年あたりから、より安く、ボリュームがあってお得なものを志向する消費行動が目立ってきたことが挙げられます。
つまり、コスパ最優先の買い物をするようになったときに、「あれ、冷凍食品ってコスパがいいみたい」と思う方が増えたようなのです。
冷凍食品ももちろん、度重なる値上げを経て、あらゆる商品で価格レベルは上昇しています。しかし、他の食品や外食の価格、お惣菜売場のお弁当の価格と比較すると、価格帯の上昇具合いは緩やかで、「おいしくて安い」と感じてもらえるようになったようなのです。
確かに賞味期限が長く、ロスを抑えることができる冷凍食品は、コスパを表現しやすい食品と言えそうです。
家事労働もコストと意識高まる
振り返れば、「冷凍食品は高い」と言われていた時代がありました。女性の就業率が結婚・子育ち時期にぐっと低下して中年以降再び上昇して、そしてまた低下するという、グラフにすると「M字カーブ」を示していた時期です。家事を一手に引き受けていた女性たちは、食事にかかわるコストに自身の家事労働時間を入れず、食材費だけで比較して、冷凍食品は高い、と考えていました。
ところが、今や就業率は男性84.5%、女性74.1%(総務省・労働力調査、2024年:15~64歳)です。女性の就業率は上昇を続けてきて、男性との差はわずか10.4ポイントです。働き盛りの年代25~44歳の女性のみでは、就業率81.9%。男女の差はわずかになっています。
労働時間はコスト、家事労働も同じ、という意識は社会に浸透、いや、女性と若い男性の間によく認識されるようになりました。
男女共同参画社会とは、共に働くだけでなく、共に家事労働に携わることを意味しています。若い男性には、ぜひ調理スキル不足を解消できる冷凍食品を利用して、“料理男子”になってほしいですね。

就業率の推移
タイパ~時短ではなく「時産」
ワンプレート冷凍食品のメリットは、ワンコイン(500円)以下で買えるコスパ。1回のレンジ加熱で多種類の食材を使用した1食ができあがるタイパ(タイムパフォーマンス)だと私は説明しています。ご飯を炊いて、主菜、副菜を調理するのに要する時間と、1回7分弱くらいのレンチンで全部揃うワンプレート。比較するまでもなく、タイパ良しです。

同様、具付きのめん類も、ほぼ10分以内の調理時間で、ワンコイン以下のものがほとんど。コスパもタイパも良しです。
食材を洗ったり、剥いたり切ったり、焼いたり煮たり、忙しい平日には調理を楽しむ余裕もなく、どうにかして省略したい作業時間です。また、生鮮食材を多数揃えていると、どうしてもシナシナにさせてしまう野菜も出てきて、それを捨てるとなると、結局お金を無駄にして、食品ロスを生んでしまったという罪悪感まで背負ってしまいます。
そんな悩みを解消してくれる冷凍野菜は、昨今の生鮮野菜高騰もあって、今年は人気急上昇です。
さて、そんなタイパのことばかり言っていたら、先日、首都圏市販冷食連絡協議会(市冷協)の消費者向けイベントで、冷凍料理家&冷凍インフルエンサーの冷凍子ママが、「時短じゃなくて“時産”」と発言されて、ハッとしました。
冷凍食品の利用によって「時産」。時間を産み出し、その余裕でいろいろなことができて生活が豊かになる、という説明でした。「子どもとゆっくり遊ぶ、勉強をみてあげる、夫婦でのんびり、エクササイズや趣味等々、あなたが今日、本当にやりたいことができる。より良く生きるための戦略として選ぶ味方」(冷凍子ママ)が冷凍食品、冷凍活用。同じ子育て世代の皆さまからの熱い視線がありました。

冷凍食品は栄養がとれないという誤解の解消
スーパーの冷凍食品売場の中で、コロナ禍前に登場し始めていた“ヘルス&ウェルネス”カテゴリーは、注目度合いは高いながら販売はいまひとつ、といわれていました。プラントベースの商品やアレルギーフリー対応のシリーズなどをコーナー化しても、需要が育たなかったのです。健康と冷凍食品のイメージがかけ離れていたのかもしれません。
そういえば、昔から「冷凍食品は簡単便利だけど、栄養はちゃんと摂れないのでは?」という大いなる誤解が存在していました。
一方、家庭用冷凍食品のほとんどのパッケージには、カロリーをはじめ主要な栄養成分や食塩相当量が表示されているのですが、きちんと確認する人は少なく、また、自分がどれくらいの栄養素を摂取すべきかあいまい、という方が多いというのが実情です。
ところが、コロナパンデミック以降、積極的な健康維持に関心は高まり、潮目が変わってきました。冷凍食品の利用が広がる中で、商品情報に関心が高まり、とれたて、作りたての栄養価を保っている冷凍食品の特長に対しても認知が広がってきました。
健康づくりに役立つ「ウェルパ」
栄養摂取をはじめ日本人が抱えている食の課題は、すぐ思いつくだけでも、カルシウム不足、たんぱく質不足、塩分過多が挙げられます。食品の摂取量では、野菜不足がいわれていて、果物摂取量では、先進国最下位どころか世界で最低レベルです。
野菜たっぷりを訴求した商品は人気が高く、カルシウム、たんぱく質たっぷりに関しては、高齢の方々への訴求ポイントになっています。特にたんぱく質(プロテイン)摂取は、コロナ前までは、筋肉マッチョを目指す方々の代名詞のようでしたが、その重要性の認識が広まると、特に高齢の方々がフレイル(活動低下の虚弱状態)予防に積極的に摂取するようになってきました。
ニチレイフーズが昨年テスト販売し、今年春から全国発売をスタートさせた、たんぱく質摂取をテーマとした「everyONe meal(エブリオンミール)」ブランドは、コーナー導入店で好調な売れ行きです。また、味の素冷凍食品では、Amazon限定で販売してきたたんぱく質強化商品とは別に、今年6月から自社オンライン販路で、「たんぱく豚肉餃子」「たんぱく豚肉焼売」を発売しています。

フルーツでは、今年、ブルーベリーが絶好調で、大袋を買い求める方が増えていると聞きます。老若男女、ケータイ使用時間が長くなり、目の疲れ改善を目的に朝食で食べるという方が増加しているようです。
健康づくりに貢献することは、いまや冷凍食品の商品開発のテーマのひとつ、と言ってよい時代かもしれません。
イートアンドフーズも長く、5フリー(食品添加物としての調味料、着色料、香料、甘味料、に頼らない商品づくり)のコンセプトを掲げ、実践してきています。また、安心感を与える「具材はすべて国産」の告知も含めて、商品パッケージにも5フリーのアイキャッチを印刷しています。素材の力を活かした商品づくり、冷凍食品だからこそ可能な取り組みとして、高く評価されています。

目指せ「ウェルパ」。からだの健康ばかりでなく、心身がより良い、快適な状態であること、ウェルビーイングに貢献する食品を目指す冷凍食品に、今後もますます消費者の注目が集まってくると予想しています。