「冷凍食品ジャーナリストです」と言うと、え?そんな職業アリ?という反応が返ってきます。しかし、先日あるオンラインメディアの方から、「〇〇ジャーナリストって増えているんですよ~」と聞きました。
確かに、何か1点に集中して、調べて知識を増やして世の中に発信したり、考察したりすれば、その領域のジャーナリストです。世の中のあらゆる物や事象のジャーナリストが無限に誕生してもおかしくない、のです。
私は、冷凍食品新聞社を2015年9月末に退社して独立。BtoBの業界専門紙から転じて、BtoCのネット媒体運営を目指し、翌日から活動を開始しました。何を血迷ったのか、という声も聞こえてきましたが、34年間冷凍食品業界の報道に携わり、業界の常識がなぜか正しく伝わらない、どうすれば良いのか、そうだ、私が伝えればいいんだ!と思いついたら止まりませんでした。
ウェブサイト「冷凍食品エフエフプレス」(略称エフエフプレス)を立ち上げて、おかげさまで、皆さまの目にとまるようになりました。2015年10月から8年半近くになりますが、掲載した記事は3233(2月17日時点)。平均すると1日当たり1記事以上を続けてきたことになります。
サイト上では、直近の読まれている記事ランキングと、記事トータルでたくさん読まれているランキングを掲載しているのですが、この上位に来る記事の内容が、コロナ禍以降様変わりしました。それは、冷凍食品の安全性に関する解説記事(専門家に依頼して書いていただいた冷凍食品安心・安全Q&Aコーナー掲載)が上位に来るようになったのです。
皆さまご承知のように、コロナ渦中に冷凍食品のユーザーは爆発的に増えました。そしてコロナ禍が過ぎ去っても冷凍食品を愛用する方が増えて、そんな方々が、冷凍食品ってどうなの?安全?大丈夫?と思っていらっしゃるということのようです。
「安心してください。冷凍食品は安全ですよ」
袋がパンパン!大丈夫? 原因のほとんどは体積が増えた空気
エフエフプレスの”月間人気記事(過去30日間ランキング)”を見ると(2月18日時点)、
次の通りです。
発表されたばかりの2024年春夏新商品の話題、注目を集めている冷凍食品食べ放題レストランの話題に混じって、「冷凍食品安心・安全Q&A」コーナー掲載の記事が上位に2つ入っています。同コーナーでは、『冷凍食品についての素朴な疑問シリーズ』と題して、よく質問を受けることを取り上げて解説しています。執筆いただいたのは長年大手企業で品質保証を担当されてきた鳥羽茂氏です。
直近の4位にランキングされている「Q フリーザーの中で冷凍食品の袋がパンパンに膨らんでいるのですが、中身は大丈夫なんですか? 」へのAは、「結論から言えば、買ってからきちんと冷凍庫で保管していたものなら捨てないで下さい。膨らんでいる原因のほとんどは、体積が増えた空気です。」
以降、詳しい説明が続きます。気になる方は、エフエフプレスをご覧ください。
https://frozenfoodpress.com/food-safety-checks3
袋内の空気膨張の原因をかなり詳しく解説いただき、メーカー各社はその解決策も打っているという内容で、私自身もなるほどとそれまでの知識を塗り替えることにつながった記事でした。
袋が膨らむと、中身が腐敗しているのでは?と考えがちですね。憶測で捨ててしまってはもったいない。本解説が皆さまの安心と食品ロス削減につながっていることを嬉しく思います。
どうして-18℃以下? 法律より厳しい業界自主規格です
冷凍食品には、「保存方法:-18℃以下で保存してください」と書いてありますので、それはなぜ?という記事が第5位。冷凍食品自体に興味を持っていただく方が多くなっているようですね。これも嬉しいことです。
食品衛生法で定めている冷凍食品の保存温度は、「-15℃以下」です。これは微生物が繁殖できない(つまり腐らない)温度帯として規定されています。業界ではさらに厳しい-18℃以下の温度管理を自主基準としていますが、これは、微生物の繁殖を抑え、かつ最初の品質を長く保つ(約1年間)手段であり、世界基準でもあります。
同記事ではその解説に加えて、家庭の冷凍庫での保管についても触れています。家庭の冷凍庫はほとんど、-18℃以下を保つ機能を備えていますが、開け閉めの度に温度変化が起こります。期限表示にかかわらず早めに使い切ることが、冷凍食品を美味しく食べるコツになります。
https://frozenfoodpress.com/food-safety-checks4
自然解凍OKは何が違うの? そのまま食べられる衛生規格基準をクリア
コロナ禍中以降、「安心・安全Q&A」の記事は、3000を超える掲載記事の中でも上位になっていて、現状で1位~4位を占めています。
1位は、「Q 自然解凍で食べられる冷凍食品と「加熱してお召し上がり下さい」と表示された冷凍食品がありますが、どう違うのですか?」です。
冷凍食品の中で「自然解凍OK」の商品は増えていて、お弁当作りに非常に嬉しい機能を提供しています。自然解凍で食べられる冷凍食品には、「加熱調理の必要性:解凍してそのままお召し上がり下さい」などと書いてあります。これらは、加熱殺菌されていて、かつ、衛生レベルの高い環境で包装されていますので、自然解凍するだけで、安心して食べられます。
また、日本冷凍食品協会は、自然解凍可能とするお弁当用冷凍食品に対し、35℃9時間の保存にも耐えられる規格基準を満たすことを求めていますので、お腹を壊す心配もなく、安心して食べることができます。
他の商品はというと、「加熱してありません」+「加熱調理の必要性:加熱してお召し上がりください」との表示と、「加熱してあります」+「加熱調理の必要性:加熱してお召し上がりください」と記してあって、混乱しがちです。殺菌目的の加熱をしていない食品、生産段階で加熱工程はありますが調理用の加熱をしていない食品、と大雑把に分けられます。衛生状態の規格(菌数レベル)が異なる食品であるということです。
https://frozenfoodpress.com/food-safety-checks8
そして4位は、「中国産」冷凍食品に関する漠然とした不安に対して回答した記事です。この質問にもズバリ、中国は今や安全性の高い輸入相手国であることを統計数値が示している、と解説しています。
https://frozenfoodpress.com/food-safety-checks1
さて、ここまで書いてきて、「添加物が心配」という素朴な疑問については、上位になっていないことに気づきます。冷凍食品は保存料を使用せずに長期保存できる食品であることについて、かなり認知度が高まってきているのではないでしょうか。
でも念のため、書いておきますね。
「安心してください。冷凍食品は保存料を使用しなくて良い食品です」