「値上げに悲鳴をあげる生活者」 先日、消費トレンド勉強会に参加して、この言葉を聞いた時に、衝撃が走りました。日本はエンゲル係数(消費支出の食費比率)が高い国に、という新聞報道も驚きです。そりゃそうですね。給料が上がらず物価が上がれば、生活は苦しくなります。
生活防衛の消費行動が目立つ中で、冷凍食品も買う数を減らす傾向が見られるようですが、逆に大容量品を購入して小分けに使い、コスパの良さを実感する方も多くなっています。その一例が「冷凍サバ」。
「冷凍サバ」がSNS投稿で大人気に
先月、「冷凍サバが人気らしいんです。レシピサイトがにぎやか」といった情報が入り、なになに、、、と検索してみると、冷凍サバレシピがあれこれ大量に見つかり、コスパがいい!と調理リポートをアップする方もたくさん。ブームなのでしょうか。
水産関係の記者仲間に聞いてみましたが、「えーー?」と冷ややかな反応。もう少し話題を追ってみると、「業務スーパーで買った。1切100円以下♡」とSNSに書き込んでいる写真のパッケージは、あら、業務用メーカーのあの商品、この商品。【写真の極洋製品は一例です】
冷凍サバ料理リポーターは、あれこれいろいろなことを推測で書いたり動画付きで言ったりしているのですが、おいしくて当たり前です。食堂で、お弁当で、いつも食べていらっしゃる、あのサバです。
多くはノルウェー近辺で水揚げされるサバで、水産企業・商社の目利きが厳選している原料です。「骨とりしたものもあって嬉しい」といった声も見つけて、“そうです、あなたのために工場で手間暇かけて骨をとっている人がいるんですよ”と心の声が叫びました。
スーパーの鮮魚売場に冷凍ケース、精肉売場にも同様にといった事例が増えていますが、人気商品があるかというとどうもパッとしない、そんなに売れていないと聞いていました。しかし、物価高が続いているこのご時勢、「コスパ」という切り口でヒットする商品が誕生するのではないかという期待感が高まってきました。
話題は少しそれますが魚つながりで、魚肉ハム・ソーセージがいま、とても売れているそうです。ニッスイからの提案、『速筋タンパク』アピールの影響もあると思いますが、魚肉ハム・ソーセージは、コスパの良いたんぱく源として認知が広がっています。また、若い世代にとっては、昭和レトロ感覚の新食材(?!)とか。時代は巡り来るものですね。
魚消費は肉に負け続けてきましたが、冷凍魚介はコスパ良し、プロも使っているという認知が広がっていくと、V字回復も夢ではないのかもしれません。
私は常日頃、冷凍食品を使うことは手抜きではなく「手間抜き」だと主張していますが、さらに、お財布にも優しいのだというPRもしなくてはいけないなと思っています。
コスパ良し・タイパ良しでワンプレートの人気衰えず
おかずのセット、主食と主菜・副菜がセットされたお弁当タイプ商品など、「ワンプレート」冷凍食品の人気は続いていて、先日の「フローズンアワード2024」(日本アクセス主催)キャンペーンでも、冷凍食品新部門に『ワンプレート』が設けられました。そして、イートアンドフーズの「大阪王将 ぶっかけ肉にら玉あんかけ炒飯」が部門1位に輝きました。
2位は日本アクセス「Delcy 豚生姜焼弁当」、3位には、キャンペーンの特別企画ドラマに登場した架空の冷凍食品メーカー、ビックリ食品の「シェフのロコモコプレート」がランクイン(実際の発表は、ニッスイ「ふっくらごはんと豚肉生姜焼き」でした)。
価格改定をする前は300円台後半、改定後でもワンコイン(500円)くらいというワンプレートは、コスパ良し、タイパ(タイムパフォーマンス)良しで人気が衰えません。ひと時代前は、自分自身の調理時間にコスト意識を持たない方が多かったのですが、時代が求めるのは「タイパ」なんですね。食材を選んで買う、ご飯を炊く、おかずを作るという家事の時間を考えると、また、買いすぎた生鮮品は、使い切れなかったらムダになりそうと予測すれば、ざっくり考えても1食500円で収まらないと判断するのが今どきの消費者意識です。
冷凍食品のワンプレートは、買い置きしておいて、数分の電子レンジ加熱で1食完成します。しかも満足感のあるおいしさ、食品ロスの罪悪感もなし、となると、続く人気も納得です。
サブスク宅配ワンプレートもお得感あり
「日経MJ」紙の人気企画、ヒット商品番付に、「冷食サブスク」(東の前頭)が入りました。インターネットで注文できて、宅配してもらえる冷凍食品。パン、スムージー・スープなどもありますが、多くは、ワンプレート品です。
先日、最も成功している企業といわれる、糖質コントロール・塩分コントロールおかずセット宅配、「nosh(ナッシュ)」のプレゼンテーションを受ける機会があったのですが、常時メニューを100種類近く揃えていて、倉庫とピッキングセンターを自前で整備しているという話に驚きました。1食当たりの価格は契約数によって違いますが、多くの方が500円前後、プラス送料で利用しているとのこと。保冷して自宅に届く、というポイントも「タイパ」のようです。
お弁当冷食需要復活、そしてオフィスでも冷食
ここ数年続いている物価上昇に伴って、お弁当用冷凍食品の人気が上昇しています。今では、「お弁当」と言わず、「小分けおかず」といった表現もしていますが、ランチを外食すると1000円レベルという都心では特に、お弁当持参で節約する方が増える傾向のようです。
お弁当1つ作るコスト意識は、残りものなら100円感覚、がんばって作って200~300円くらいでしょうか。ところが、そんなコスト意識の方々の心に刺さっていると思われる、自分で作るより『置き冷凍食品』というムーブメントもあります。
SL Creationsが運営する『OfficePremium Frozen(OPF)』の急成長ぶりに注目しています。企業が契約して月額39,600円(税込)を支払うと、オフィスの片隅に冷凍庫と電子レンジ、使い捨てのエコ対応皿などが設置され、従業員が自由に食べたいものを出して、レンチン調理をして食べられます。その価格は、200円と100円。例えば200円でパスタやチャンポン、100円でハンバーガーやお惣菜が食べられます。企業が福利厚生費として月額使用料を支払うことにより、従業員が激安ランチを食べられるのです。良い仕組みですね。冷凍食品だからこそできるサービスです。
対応地域は1都、1道、2府、39県(つまり石川、高知、香川、徳島以外)と広がっていて、商品を補充してくれるのは、地元にいるSLCの販売員。オフィスまでの配送料が発生しないという点が、受けているようです。
調理技術格差解消の食品、冷凍食品
本欄では、6月に冷凍食品に対する意識の変化をご紹介し、ホームフリージング活用のコスパ享受をオススメしましたが、どうやらこの年末、冷凍食品を活用すること自体が、コスパ、タイパという時代に突入したようです。
「時短」で「おいしい」というのは、冷凍食品の得意技なのです。
家庭の中で男性も女性も忙しい、となれば、料理=女性という時代もそろそろ終わりを告げるでしょう。男性で調理スキルはいまひとつ、という方は多いかと思いますが、冷凍食品なら「調理技術格差」が解消できます。
料理はおっくうな家事ではなく、ゆっくり時間が取れるときに楽しむレジャーになってくるかもしれません。