羽根つき餃子、ぷるもち水餃子の大阪王将│5フリーで食卓へお届け

お客様目線で進化し実現した5フリーの冷凍食品づくりの起源とは。イートアンドフーズ代表取締役社長 仲田社長インタビュー vol.1

大阪王将の冷凍食品を製造、販売している株式会社イートアンドフーズ。長年愛されているお店の味をそのまま家庭で楽しめる冷凍餃子をはじめ、数々のヒット商品を生み出し続けているその背景には、どんな人たちの想いや挑戦があるのでしょうか。

今回は、そんな株式会社イートアンドフーズ、そして親会社の株式会社イートアンドホールディングスでも代表取締役社長を務める仲田浩康社長にインタビュー。

食品メーカーの社長はどんな若手時代を過ごしたのか、といった歴史に迫ります。

今はイートアンドの社長でも、入社のきっかけは「普通に求人誌から応募」

編集オガワ
まずはストレートな質問になってしまいますが、仲田社長がイートアンドに入社されたきっかけから伺えますか?
仲田社長
実は、もともと別の食品系メーカーに転職する予定だったんです。もう内定も出ていて、意思表示も済ませていました。ところが、ある日ふと見た求人誌に「大阪王将 営業職募集」の文字があって、興味を惹かれたんです。
編集オガワ
―仲田社長のことだからヘッドハンティングとか創業時にバイトで働いていたとか、特別な入社の仕方をしていたのかと思っていました。普通に転職して、そこからキャリアアップしたんですね…。
仲田社長

そう、普通に求人情報からですよ。大阪王将って外食店なのに、営業職を募集してるってどういうこと?と。素朴な疑問が湧いてね。近所に大阪王将の店舗があったので、ちょっと覗いてみようと足を運びました。そこで面接官をしていた当時の常務にお会いしたんですが、その面接がまたユニークで。夢を語ってくれるんですよ。他の企業の面接って一方的に質問されるばかりなのに、そこでは「上場を目指している」とか「将来こうしたい」といった話を聞かせてくれた。

当時の大阪王将はまだ規模も小さくて、食品事業の売上もほんの数億円程度だったのにそんな大きな夢の話をしてくれたことが妙に心に残って、面白い会社だなと。正直、現実味はなかったですけど、「もしかしたら面白いことが起きるかもしれない」と思ったのが、入社のきっかけでしたね。

 

「売る商品も販路もなかった」東京営業のスタート

編集オガワ
ご入社後は一般社員として営業活動に就いたのですか?
仲田社長

ええ、いわゆる一兵卒として、東京での営業を始めました。ただ、当時は売る商品もなく、販路もありませんでした。今でこそ考えられませんが、最初はOEMで餃子を作ってくれる工場を探すところからのスタートでした。

営業と言っても、卸業のようなものでした。原料を供給したり、他社製品の仲介をしたりと、いわば商社的な立ち位置。でも、我々としては自社ブランドを広げていきたいという思いが強くあって、そこから自社商品の営業にシフトしていったわけです。

編集オガワ
当時は大阪にしか外食の大阪王将のお店はなかった、という時代ですよね?そんな時代に東京での営業…大変だったのでは?
仲田社長
そうですね。東京では大阪王将の知名度がほとんどなかったので、新聞を読み漁って、どんな会社がどんな商品を扱っているのかを調べ、電話をかけ、本当に一軒一軒アポを取って、「大阪王将って何?」というところから説明しないといけませんでした。クーラーボックスにサンプルを詰めて調理器具をかついで行って、その場で焼いたものを食べてもらって、という営業スタイルでした。―
編集オガワ
話を聞くだけで大変さが想像されます…。
仲田社長
法人相手だから金曜日まで出張して、金曜の夜に東京から大阪に帰る新幹線に乗るでしょ。でも金曜日の夜って満員なんですよ。席がないのでクーラーボックスに座って帰ってきたりしてね。とにかく、知名度も販路もゼロからのスタートでしたね。

前職の経験が今にも活きている。スーパーにおけるお客様視点

編集オガワ
当時の仕事の中で、営業で特に意識されたことはありますか?
仲田社長

一番意識していたのは“売価感覚”ですね。僕はイートアンドに来る前はスーパーで働いていてね。自分の売り場だけでなく、お客様の買い物感覚というものをそこでよく勉強しました。当時のスーパーでは一品200円前後の価格帯が基本。それを10品買って2,000円ちょっとになるのが、一般家庭の一度の買い物におけるバスケット感覚、常識なんです。

だから僕らはそうした棚効率を意識して、ちゃんと売場に合った価格で勝負しようと考えた。お客様の生活に合った値ごろ感が設定されていなければ、どんなに美味しい食品でもリピートにもつながりませんからね。

「5フリー」10年越しの共感と意外な進化

編集オガワ
お客様視点を重視、という観点でいえば、大阪王将ブランド冷凍食品ラインナップの特徴のひとつに「5フリー」(食品添加物としての調味料・着色料・香料・甘味料・発色剤に頼らない商品づくり)がありますよね。これも早い段階から取り組まれていたと聞きました。
仲田社長
導入したのはもう10年ほど前になりますね。当時は、差別化の一環として、我々のような規模の会社が勝ち残っていくのではなく生き残っていくために、何か他社と違う価値を提供しなければと考えたところから、「5つの不使用(食品添加物としての調味料・着色料・香料・甘味料・発色剤不使用)」という考え方を商品に取り入れたんです。
編集オガワ
合成着色料不使用、などはよく見かける気もしますが5種類というのは珍しいように思います。
▲パッケージにも表示されている「5フリー」
仲田社長
そう、まったく一般的ではなかった。正直、開発したところで買っていただけるかどうかも分かりませんでした。でも、将来を見据えてやってみようと。すると、意外にも若い世代──特に小さなお子さんを持つ家庭には価値を感じていただけたお客様がいたんです。最近では、「5フリーだから選んでいます」という声をいただくことも増えてきました。少しずつですが、しっかりと根付いてきている実感があります。
編集オガワ
開発のインタビューなどをしていると、「5フリーのポリシーがあるので、素材の味を活かすために調味料そのものも独自開発した」といった話も伺ったことがあります。
仲田社長
そうですね。「不使用に対するニーズ」というところから始まった「5フリー」なのですが、それが今ではそのニーズのためだけではなく、当社らしい味作りのこだわりに反映されるようになってきました。独自開発の調味料も種類が増え、餃子だけでなく様々な食品で活かされるようにもなってきています。

地道な営業がブランド作りの始まりだった。次回明かされる冷凍食品の秘密

今回は株式会社イートアンドフーズ、そして親会社の株式会社イートアンドホールディングスでも代表取締役社長を務める仲田浩康社長へのインタビューをお届けしてまいりました。今でこそ上場会社として食品をお届けしている会社ではありますが、知名度も販路もなかった時代には東京で誰にも知られていないブランドを、クーラーボックス片手に東京で一軒一軒営業を重ねて広めていくという地道な努力、そしてお客様目線に立っての商品開発の意外な進化を知ることができました。

次回は、そんなイートアンドフーズの冷凍食品事業成長の秘密に迫ります。