羽根つき餃子、ぷるもち水餃子の大阪王将│5フリーで食卓へお届け
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冷凍食品ジャーナリスト山本純子の『冷凍食品のはなし』

  • 2024年7月17日

プラントベースの進化形から日本の食の可能性を考えたニューヨーク

さらに円安、160円台!そんなニュースを聞いて「あぁ頑張れ祖国」と心でつぶやいた旅先。アメリカ視察団に先月末参加(山本が事務局長を務めるピザ協議会企画ツアー)しました。テレビではバイデン×トランプ討論会。まぁこれはどうなることやらと置いておき、気になる食の未来を探るべく、ニューヨークで開かれていたFANCY FOOD SHOW2024(第68回)会場を見て回ったのでした。 スーパーを視察しては、ピザ、冷凍食品、プラントベースの加工品などを買い求めて、キッチン付ホテルで試食。改めて日本の食品メーカーの底力、つまり、どんな食品を買い求めてもそこそこ美味しいし見栄えも良い、という実力を感じた次第です。 事実、JETRO・農水省による日本パビリオンは、ニコニコと試食する人々で賑わっていました。そして街では、ラーメン店に長蛇の列。日本居酒屋は、仕事帰りの現地住民で溢れていました。   ■会場の一角に存在感、プラントベースパビリオン 視察の目的の一つであったFANCY FOOD SHOWは、冬はサンフランシスコ、夏はニューヨークで開催されている”こだわり”商品を一堂に集める北米最大規模の展示商談会です。出展企業は今回、海外56カ国の出展も含めて2,523社、3日間で約2万9.000人のバイヤーが来場しました。 会場は2層で、上層は主に各国パビリオン、チーズ、菓子・スナックなどアメリカの巨大産業を象徴する展示、下層は米国内各州のパビリオンとビバレッジ・パビリオンに加えて、プラントベースフードのパビリオンが設置されていました。昨年視察したドイツのAnuga展でも、プラントベースフードは大きなトレンドであると同時に、たんぱく質の新供給源としてコオロギ(Crickets)への注目度の高さを目の当たりにしました。日本では、企業の熱量が若干下がったかと噂されているプラントベースフードや代替肉ですが、将来を見据えれば避けて通れない大トレンドであると実感しました。   ■美味しいプラントベースも誕生 FANCY FOOD SHOW会場での試食、さらに、スーパーで買い求めたプラントベースフードをいくつかと食べてみると、コロナ禍前に食べた時とは少し違って「これはいける、美味しいね」と思う商品もあったことが驚きでした。かつては、原料の大豆たんぱくの風味をマスキングして、かつ肉料理っぽさを出すために香辛料をたっぷり使っているイメージがありましたが、研究、改良は進んでいるようです。 とはいえ大半のものは、美味しさより理念が重要、と考える人々を対象に作られているんだなと思わせる製品。日本企業がプラントベースフードに着目してから数年で、驚くほど精巧な形状と味わいの製品を作り上げていることを思うと、わが国独特の飽くなきサービス精神をもっての食品開発魂は、きっと米国マーケットでも受け入れられるはず、と確信した次第です。   ■アメリカ市場を狙う日本企業 ラーメンが欧米で大人気。しかしまだまだ、現在の10倍は広がっていくだろうという話をアメリカや欧州に自社拠点を持って製品を送り出している西山製麺から聞いたばかりでのアメリカ訪問。街を歩いていると、自然とラーメン店に目がいったのですが、噂通り、昼間は入店待ちの行列で、夜も人足が絶えないという繁盛ぶりでした。 展示会場の日本パビリオンでは、38社が出展して、抹茶、ゆず、味噌、ごまドレなど人気のカテゴリーをはじめ、バイヤーが興味深く商品を見ていました。中でも『NIPPON KITCHEN』 のブランドで、魚料理や惣菜をはじめ日本の食文化をトータルに提案していくというPRをした亀井工業ホールディングス㈱(神奈川県茅ヶ崎市)のブースに注目しました。 同社は100数十年続く建築業をルーツに、「まち」づくりの観点から老健施設向け調理冷凍食品の提供サービス(グローバルキッチン)まで多角的な事業を手がけています。亀井信幸社長が自らブースに立ち、「日本食でアメリカ人を健康にする」と意気込みを語ってくれました。 確かに、高脂肪、糖度の高いアメリカンフードから和食に切替えるだけで、摂取カロリー、脂質も糖質も大幅にダウンしますから、アメリカには日本食全体をヘルシーフードと考える方が多くいると聞きます。 餃子を試食提供している企業もあり、話を聞くと、水産物輸出の拠点を生かして、「プラントベース餃子」の販売を開始したところ、さっそく高級スーパーに採用されたという㈱CHOKAI(東京都板橋区、佐藤雅弘代表取締役 写真㊤向かって右の方)でした。   ■K-FOODも人気集める さて、日本では韓国メニューの人気が続いているのですが、アメリカでもそんな傾向が垣間見られました。もしかして、全米ヒットチャートNo.1を獲得したBTSが貢献? FANCY FOOD SHOW会場で最も人気を集めて行列までできた商品も韓国フード。それは、らせん状にポテトをカットして串を刺して揚げたトルネードポテトでした。フライドポテトが発祥地の欧州から米国へ、さらにぐるっと世界を回り、クルクルした形になって韓国から里帰り、なのですね。ポテトの産地は中国で、細長いラセット種でした。 街の中でチーズがビヨーンと伸びるチーズドッグも発見。また、人気スーパー、TRADER JOE’Sでは、昨年から話題になっていると聞いた韓国産「冷凍キンパ」をゲットしました。韓国からのお米加工品はゼロ関税となっていて、価格優位性もあるようです。売場に品揃えしていないので、無いのですか?と聞いたところ、あるよ!とバックヤードから持ってきてくれました。調理方法は、袋の端をカットしてレンジ加熱、しばらくそのまま放置して温度が均一に馴染んできたら食べます。「無印良品」で人気のキンパと同様ですね。そこそこ美味しいかな、という感想でした。   ■居酒屋で冷凍食品のパワーを感じる ツアー中の夜、有志の食事会となり、どこに行くかという多数決で、和風居酒屋の圧倒的得票に驚きました。たまにはそんな経験もよいかとドアを開けたら、「いらっしゃいませ~」と言われて、新宿?新橋?と錯覚するほどのデジャブ感を味わいました。ということで、お店で見た居酒屋メニューの写真。 たこ焼に枝豆、ししゃも、煮魚、、、冷凍食品の“時空間超越パワー”をマンハッタンの真ん中で実感した、というのがオチでした。

  • 2024年6月20日

「節約」志向のいまこそ、冷凍パワーを使いこなそう!

6月に入って30℃以上の夏日も幾日か、「あぁ、また、あの猛暑の夏が迫っている、、、」と、ちょっと憂鬱ですねぇ。電気・ガスの補助金がなくなる6月。定額減税というありがたいお金をもらえるけれど、食品をはじめあらゆるものの価格はまだまだ上がりそう。財布のひもは締めざるをえず、「節約」の話題が盛り上がります。 今回は、冷凍食品とホームフリージングは、家計に優しい! がテーマです。   ■外食より「お弁当」「家飲み」で節約 コロナ禍中スーパーに誕生した「おつまみ」コーナー   食料自給率40%以下(カロリーベース)。つまり生活する上で必要な食料の60%以上を海外から買っているわが国ですので、昨今続く円安基調は大打撃。さらに、エネルギーコストも物流コストも人件費も上昇して、食品メーカーは自助努力だけではコストアップ分を吸収できません。 食品全般の例にもれず、冷凍食品も価格改定が数度にわたって行われています。価格が上げれば消費者は敏感で、少し買い物点数を減らしたりします。つまり、節約。 前年度の各社業績発表を聞くと、価格改定をしたことで冷凍食品売上は前年を上回っていますが、販売数量では減少している企業が多くあり、消費行動がすぐ生産者の業績に反映されています。ただ、冷凍食品のジャンルは非常に多岐にわたるので、「これは必需」「ぜったいコスパ良し」と受け止められているものは、価格改定後も販売数量の落ち込みが少なかったようです。 たとえば、メーカーによっては売上大幅アップという「お弁当」ジャンル。某メーカーによると、一昨年後半あたりからずっと需要が伸びているとのこと。お昼ご飯を食べる外食店も価格改定をしていますので、リモートワークが明けて通勤するようになったら、お弁当持参で節約する方々急増、ということですね。 外食チェーンの味も家庭で楽しめる(イオンリテール「@FROZEN」の専門店の味コーナー)   関連して外食行動にも変化が起きています。コロナ禍が明けて会食の習慣は戻ってきても、居酒屋業態の復調は遅れているとか。お酒の好きな方々は、コロナ禍中に気楽な「家飲み」を体験していて、そこに外食メニューの価格改定が重なって「外」志向が薄れているように感じます。 家飲み=乾き物のつまみ、というイメージは、冷凍食品の「おつまみ」ジャンルの商品開発が進んだことで覆りました。コスパ良く、簡単な調理で、家飲みを豊かにする役割を冷凍食品が担うようになってきました。 家族の外食も、コロナ禍中に経験したお取り寄せが定着して、“外食レベル”の冷凍食品に対する認知度が高まりました。フレンチコースも自宅で簡単にできるとなると、家族のお祝いごとにあたって、外食にしようか、それともお取り寄せ冷凍食品で外食以上にゴージャスにするか、と悩むシーンも出てきそうです。   ■冷凍食品こそ、コスパよし、さらにタイパよし さて、節約志向の昨今でも、冷凍食品の需要はさほど落ちていない、と言われています。「コスパ(費用対効果)」良し、「タイパ(時間対効果)」良しとのメリットを感じさせて、冷凍食品の人気は衰えないのです。 今春、日本冷凍食品協会がとりまとめて発表した「“冷凍食品の利用状況”実態調査」(2024年2月実施)によると、冷凍食品は他の加工食品と比較して「コスパ」良し、「タイパ」良し、と認識されています。 タイパ1位を冷凍食品とする人の方が多い、という結果に驚きました。 〔資料:日本冷凍食品協会 令和6年“冷凍食品の利用状況”実態調査より〕   さて、素材から調理するより冷凍食品の方がコスパ良し、という話は、かねてより業界内ではいわれていて、それをどう伝えていくかという悩みがありました。例えば『炒飯調理 手作りvs冷凍食品』という企画が記憶にあります。今から20年近く前、福島県で冷凍食品のPR活動をしていた団体が行ったものですが、コスパの判定の中で、調理にかける時間についても言及していました。 その頃は、家庭での調理において、手間暇(調理時間)をコスト化するという発想は乏しかったと思います。ところが、今や「タイパ」という言葉で表現され、そのタイパに優れた食品として冷凍食品が評価されていることに感慨を覚えます。   ■ごみの少なさというメリットも評価 上記の調査では、「出るごみの少なさ」についても聞いていますが、さまざまな「中食」の中で、冷凍食品がダントツ1位でした。 〔資料:日本冷凍食品協会 令和6年“冷凍食品の利用状況”実態調査より〕   主に容器・包装に関しての評価だとは思いますが、実際、冷凍食品の包装は環境問題への貢献を考えて、メーカー各社がプラスチック使用量を削減する傾向にあります。 容器・包装以外にも、冷凍食品は賞味期限が長く、食品ロス(ごみ)を出さないという点でのメリットがあります。ロスが出ないとうことは、使ったお金がむだにならない、という「節約」につながります。   ■ホームフリージングの「冷凍」も節約に貢献 賞味期限が長く、食品ロスを出さないというメリットは、ホームフリージングでも発揮されます。ぜひ、ホームフリージングの基本を知って、冷凍食品と共にうまく食生活に取り入れてほしいと思います。 ウェブサイト「エフエフプレス(https://frozenfoodpress.com)」に、冷凍王子こと、冷凍生活アドバイザーの西川剛史さんが、「冷凍の基本」を解説してくれていますので、引用しながらご紹介します。 ★冷凍の基本① 鮮度の良い状態で冷凍する! 良い状態のものを冷凍したら、良い状態で保存、悪いものを冷凍したら悪い状態のまま保存されます。当たり前のことが出来ていない人が多いと西川さんは指摘しています。 食材を買って、1~2日で使い切れないものは早めに冷凍しましょう。 ごはんやパンを冷凍する方も多いと思いますが、ごはんは炊いたその日に、パンも買ってきて翌朝に食べるものを除いて、残りは冷凍した方がしっとりしたおいしさをキープできます。 私のおすすめは、にんにく、しょうが。両者とも、うっかりするとカサカサにしてしまい、捨ててしまいがちなものですが、調理しやすいようにカットして、1回分ずつラップで包み、さらにジップ付袋に入れて冷凍するとパーフェクトです。生姜の場合、強力なおろし金をお持ちの方は、まるごと冷凍しておいて、凍っている状態ですりおろしても良いですよ。 ↑写真は、つい先日も使おうと思いながらカサカサにしてしまったにんにく。もったいないので使おうと思いますが、やっぱり買ったその日に残りを全部冷凍しておけばよかったと反省。   ★冷凍の基本② できるだけ空気と遮断する 冷凍したいものを、「できるだけ空気と遮断する」ことも重要なポイント。 冷凍庫の中は空気中の水分も凍るため、湿度が低い状態です。つまり、乾燥しやすい状態。そこに裸の食材を入れると食材から水分がどんどんと奪われてしまいます。 食材をラップで丁寧に包み込んだり、フリーザー用のジップ付保存袋に入れて、しっかりと空気を抜いてパックします。   ★冷凍の基本③ 薄く平らに冷凍する 「薄く平らに冷凍する」ことが最後の基本ポイントです。 写真はスライスしたキュウリを塩もみして、酢漬けにしたものです。できるだけ薄く平らにすると、表面積が増えて冷気が効率よく食材を冷やしてくれます。 私の場合は、さらに、庫内の一番下(ステンレスのついた場所がベスト)に入れて、カチカチに凍った保冷剤を上に載せます。はさんで冷凍、という感じですね。他の食品に温度変化の悪影響を与えにくい、というメリットもあります。 薄く冷凍しておくと、手で折ることができて、使いたい分だけ使えます。解凍も早くて便利です。また、平らだと収納しやすいですね。 そしてホームフリージングした食品は、日持ち数週間と心得て、おいしいうちに、早めに使い切ってください。   野菜のシナシナ、カサカサは悲しく、捨てる時は残念で、貴重な食料資源をむだにしたという罪悪感を覚えます。そしてお金がもったいない。 ぜひ、時間を止めてくれる「冷凍」の活用を心がけていきましょう。

  • 2024年5月23日

冷凍食品はコミュニケーションツールになる!!

訪日外国人観光客が驚き、ニコニコして写真を撮る渋谷のスクランブル交差点。渋谷駅前のハチ公像を背にして対角にある「SHIBUYA TSUTAYA」(カルチュア・コンビニエンス・クラブ㈱:CCC)が、4月25日に全館リニューアルオープンしました。その3階と4階で営業する「SHARE LOUNGE」(https://tsutaya.tsite.jp/store/lounge/)のフリーフードコーナーに、今回初めて冷凍食品が加わりました。   時間制で利用料金を支払えば、快適空間で仕事や面談ができて、フリードリンク・フリーフード。つまり、飲み放談、食べ放談。従来フリーフードは、ナッツバー、お菓子、パンなどでしたが、そこに冷凍食品が初登場したわけです。 “冷凍食品食べ放題”といえば、本コラムでも日本アクセスのイベント「チン!するレストラン」(2022年東京、2023年大阪、2024年名古屋)、大阪・心斎橋のTSUTAYA EBISUBASHI地下に昨年12月オープンした「レンチン食堂」(CCCのチャレンジ業態)をご紹介しました。 “冷凍食品がいろいろ食べられること”は、ここ数年高い関心事になってきたようです。そして、いよいよ都内で、CCCが常設店のサービスとして冷凍食品食べ放題をスタートしたのです。 実際に体験してみると、何を食べようかというワクワク感があって、レンジを置いているところはちょっとオシャレなアイランドキッチン風なので気分が上がります。冷凍食品売場のようなショーケースから、自由に出して食べられる、という非日常感が楽しいスポットです。 家なら冷凍食品を食べる時は1人か、もしくは家族と一緒ですね。シェアラウンジならば、1人で食べることもありますが、友人と一緒にあれこれ選んで「それ、どう?」「あ、美味しいね」といった会話が出てきそう。もしかすると、ショーケース前で悩んでいる人に、「あ、それってこの間食べたけど美味しかったですよ」などといった会話も生まれるかもしれません。   渋谷のスクランブル交差点を眺めながら冷凍食品を楽しめる場所 「SHIBUYA TSUTAYA」の2階はスターバックスの新コンセプト店、その上3階・4階がシェアラウンジです。そのどのフロアもスクランブル交差点に面して大きな窓があり、窓側を陣取れば、人が行き交う光景を楽しみながら飲食ができます。外国人観光客の人気スポットにもなりそうです。さらに外国人が日本の冷凍食品を初体験する場にもなるかもしれません。 実際、大阪の「レンチン食堂」では、外国人の利用も増えつつあるとのこと。日本のクールな食文化体験に、冷凍食品が仲間入りしています。   シェアラウンジの3階と4階はコンセプトが異なり、3階は日本の人気サブカルチャーコンテンツ(最近はかっこよく“IPコンテンツ”と言います)のひとつである、フィギアの展示が楽しめるラウンジです。等身大フィギアもあります。席は2人がけソファ席が中心で、好きな趣味を語りあう場、と言えます。 一方4階は、落ち着いた書斎の雰囲気で、モニターを備えた半個室もあります。PCを持ち込んだり勉強したりといった、1人の利用を前提にしたシェアオフィス用途を想定しています。 シェアラウンジで数時間も居ればお腹が空くので、スナック的なものばかりでなくしっかり食事を提供できるサービスが必要だとCCCではかねてよりその対応策を検討していたそうで、昨年大阪で開催された「チン!するレストラン」の視察が冷凍食品の採用に結びついたと聞きました。 シェアラウンジの料金設定にはアルコールコースもありますので、仕事が終わってちょっと1杯のおつまみにも冷凍食品は活躍しそうです。   美味しくて満足、そして手軽 楽しい空間を提供できる冷凍食品 コロナ禍で在宅ワークが盛んだった時、自宅で手軽に、美味しく食べられる食事として冷凍食品は注目されました。もちろん、以前より、すぐに美味しいごはんを提供できるという冷凍食品のメリットは、さまざまな新しいビジネスにつながってきました。 一例は、SL Creations(SLC、元シュガーレディ、冷凍食品宅配大手)が展開している「オフィス プレミアム フローズン」(OPF)事業です。それは、いわばオフィスグリコの冷凍食品版。“置き冷食”です。企業が福利厚生の一環としてOPFを契約、毎月一定料金を支払うと、冷凍庫、電子レンジ、紙皿やカトラリーが設置されて、SLCの販売員が商品等の補充をします。企業の補助により、従業員は、1つ100円、200円といった格安の料金でSLCブランドのこだわり冷凍食品を購入でき、ランチを食べたり、残業のための夕食をとったりすることできる、というサービスです。 社員食堂を運営できない中小規模のオフィスで、従業員の食事問題は深刻です。よい環境が整っていないということが転職理由にならないようにと、福利厚生担当者は頭を悩ませているとか。 冷凍食品メーカーでも、そんな職場の食事問題解決策に対応した新しい取り組みをしています。日清製粉ウェルナは、冷凍自販機を活用した販売もできる「トレイフォーク付き 冷凍レンジ用パスタ」を開発、販売しています。 また、今年5月には日清食品が、ネット通販で販売している『完全メシ』ブランドの冷凍食品「完全メシDeli」を職場に届ける事業、「完全メシスタンド」の本格展開に入りました。これも“置き冷食”的事業です。しかも33種類の栄養素が入っている、という商品コンセプトから、健康経営に取り組む企業に高く評価されているようです。   当たり前の家庭用に納まりきらない冷凍食品 家庭用冷凍食品は、“家庭で食べる”から家庭用なのですが、どうやらそんな当たり前のことが当たり前でなくなってきているようです。 例えばトレーに入ったパスタや丼メニュー、お弁当タイプのワンプレート商品などは、ストックしておく冷凍庫と電子レンジ、そして食べる場所さえあれば、職場でも学校でも、屋外でも手軽にお腹を満たせます。紙皿や割り箸などを備えておけば、トレー入りでなくてもOK。 家庭用冷凍食品は、家庭の枠からはみ出ていて、もはや「お店以外用」?になっているのかもしれません。

  • 2022年8月25日

冷凍の方が「栄養が摂れる?!」37年前の『事件』

「女子栄養大学の吉田企世子先生から電話がかかってきてね、どうもおかしいって言うんだけど、『先生、まったくおかしくありません。当然です』ってお答えしたんだ」と得意顔で語った、日本冷凍食品協会の比佐勤常務理事(当時、後に専務理事)の顔が浮かびます。下表「生鮮ほうれん草と冷凍ほうれん草のビタミンCが含有量」を見るたびに蘇る思い出です。もう37年前のことなんですね。 (一社)日本冷凍食品協会ホームページより 当時の女子栄養大学の研究室、吉田先生は学生に、生鮮のほうれん草と冷凍のほうれん草のビタミンC量を計測して比べるという課題を与えました。ところが、何度計っても生より冷凍の方が格段にビタミンC量が多く、「おかしい」ということになって、冷凍食品協会に問い合わせたのです。野菜・果実の栄養成分、品質研究が専門分野であった吉田先生ですが、生鮮・冷凍の分析結果は同等か生鮮が勝る、と予測していたのでしょうね。その時期は、表にある6月、初夏のことだったと推察できます。 冷凍野菜はいつでも『旬』 問い合わせを受けた比佐氏は、冷凍食品の賞味期限は約1年間なので、冷凍野菜は最も生鮮品が多く出回り価格も安定している旬の時期にまとめて生産できること。旬の野菜が美味しく栄養価が高いことは当然。冷凍野菜はブランチング(下ゆで)して急速凍結していること。急速凍結は食品の組織をなるべく壊さずに凍らせておく技術なので、適切に解凍すれば栄養価は旬の時期そのままであること、などを解説したそうです。 そう、ほうれん草の旬は冬場。その組織が壊れないように保たれているということは、冷凍ほうれん草はいつでも『旬』。説得力があります。 テレビで公開された最新実験結果でも、冷凍ほうれん草の「旬」の栄養を確認。 https://frozenfoodpress.com/2022/08/27/asaichi-frozen-vegi-vitaminc/ その当時、生鮮野菜と冷凍野菜の栄養量を比べる実験を行った例はなく、業界にとっては朗報、大喜びであったと思います。実際、それ以降、冷凍食品協会は、吉田先生の研究結果(1985年)を活用して、冷凍食品のメリットをPRしています。 余談ですが、「日本食品標準成分表」に、ほうれん草の栄養成分が、通年平均と夏採り・冬採り別に掲載されるようになったのは、2015年改訂(七訂)からです。  -18℃以下で1年間、これが経済的メリット 「冷凍食品では栄養が摂れない」「冷凍したら当然栄養は壊れているはず」といった誤解は、なかなか払拭できずにいるのですが、旬の時期に凍結した野菜と端境期の生野菜の栄養成分比較にふれると、皆一様にびっくりします。 年1回、旬の時期に作る、という話も、四季が巡って1年が経つ日本の消費者の感覚にフィットする話ですね。 さて、冷凍食品メーカーの多くが採用している約1年間という賞味期限、これは、-18℃以下を保って保管するという大前提の条件があります。もっと低い温度帯なら、賞味期限はより長く延ばすことができるのですが、製造した時の品質がほぼ同等に1年保つことができて、経済的にメリットのある温度帯として-18℃以下(華氏では0℉以下)が選ばれています(国際規格のコーデックス規格も同様)。 「グリーンピースのビタミンC保持に及ぼす温度の影響」(デートリッヒ、1957年)のグラフをご覧ください。急角度でビタミンC量が減少していく他の温度帯に比較して、-18℃以下ではほとんどと言ってよいほど保存日数の影響が低いことが表われています。 ちなみに、日本の食品衛生法による冷凍食品の品温は、微生物が繁殖できない-15℃以下と定められています。冷凍食品業界は、国の基準より厳しい国際規格を自主規格として採用し、より良い品質保持に努めているのです。  栄養バランスの良い食事は、、、自分で考えましょう 冷凍食品だけ食べてくださいとは言っていないのですが、時折、「冷凍食品ばかり食べて山本さんの健康状態が心配です」という意味不明のお気遣いをいただくことがあります。 ほぼ健康です。リスクは酒量のみ、と認識してできるだけ適量摂取に努力しております。 同じように「外食ばかりだと栄養が偏る」といった話も昔からよく聞きます。なんか変、と常々思ってきました。何をどれだけの量食べるかを考えて食事をすること、これは基本的な生きる力ではないでしょうか。 学校給食を長く取材していましたが、1日のバランス、1週間のバランスを考えること。多少太っていても気にせず、健康に過ごしている今より太らないように気をつけること、などなど、栄養指導をされている先生方からさまざまなお話をうかがいました。 冷凍食品はほぼ全ての商品に栄養表示があります。原材料も分かります。とても便利ですね。何を加えてバランスを取れば良いかが分かります。 かつて、大阪のテレビ番組に出演した際、「肉、野菜、炭水化物すべて入っている。餃子は”完全食”や」と力説した芸人さんがいらっしゃいました。ピザも似ています。 え、問題は量? 確かに。美味しいものはたくさん食べたくなりますからねぇ。